本文に宛名のないメールを受け取ることがたびたびある。差出人名が書いていないこともある。たかがメールの宛名と差出人名の問題だが、ビジネス現場のコミュニケーションには、悪い影響を与えるのではないだろうか。(モチベーションファクター株式会社代表取締役 山口博)

宛名のないメールが
ストレスを与える

LINE世代は気をつけたい、ビジネスを失速させるメールマナー 本文に「○○様」と宛名が書いていなかったり、文末に差出人の名前や署名がなかったり...。LINEの影響からか最近、こうしたメールを送る人がいる。しかし、ビジネスシーンでは、こうしたメールマナーはNGではないだろうか

 先日、いわゆるベンチャー企業M社の30歳代の役員から、宛名記載のないメールを受信した。もちろん、受信者欄には私のメールアドレスが記載されているからメールが届いたわけだが、本文冒頭に「○○さん」「○○会社○○課長○○さま」「社員のみなさん」「各位」…という記載がない。

 その後、コンタクトするようになったM社の20歳代や40歳の社員からも同様に、本文に宛名の記載のないメールを受信した。どうやら、たまたま宛名を書き忘れたというわけではないらしい。中には、受信者に複数のメールアドレスが記載されていて、数人に一斉に送信しているメールもあった。

 宛名だけでなく、メール本文の最後に差出人の名前もなく、かつ、会社名などを記載した署名がないメールもあった。送信者欄には差出人のメールアドレスが記載されているとはいえ、本文を見ただけでは、誰からのメールなのかが分からない。

 私は、このM社と仕事をするようになるまで、本文に宛名記載のないメールを受信したことはなかった。差出人の署名がないメールはたびたび受信するが、その場合には文頭で名乗るか、もしくは文末に差出人名が書いてある。署名もなく、本文中に差出人の名前がないメールも初めてだったので、違和感を覚えた。

 差出人には、そのような意図はないのかもしれないが、正直なところ、ないがしろにされているような気持ちになった。

 受信者欄を見にいって、確かに私宛のメールだなということを確認することが必要だった。しかし、受信者欄に複数のメールアドレスが記載されているメールを受信した時には、複数のうちの誰に伝えたい内容なのだろうと、考えてしまうこともあった。何回か宛名のないメールを受け取るうちに慣れるかもしれないと思ってもみたが、慣れるどころか、M社からメールを受信することに、ストレスを感じていることに気づいた。

 ある時、M社からのメールの受信者に同時にメールアドレスが記載されていて、私よりも古くからM社とコンタクトしていたD社の人から、「M社からの、本文に宛名のないメールは失礼ですよね」と話しかけられた。違和感を覚えていたのは私だけではないことがわかり、M社の役員や社員にやんわりと理由を聞いてみることにした。すると、メール本文に宛名を書かない意外な理由が、次々と返ってきた。