オマーン湾で軍事訓練するイラン兵。イランの行動が原油価格に影響を及ぼしている
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 イランによる核開発をめぐる国際社会の緊張が、日本経済に暗い影を落としている。

 米国では昨年末、イランへの追加制裁を盛り込んだ法案が成立。欧州とともにイラン産原油の禁輸措置にも舵を切っており、同調する日本も12日、段階的にイランからの原油輸入を削減する方針を示した。これに対し、イランは新型ミサイルの試射や新たなウラン濃縮施設の稼働を誇示、切り札として、原油輸送の要衝である「ホルムズ海峡」の封鎖をちらつかせたことで、緊張感が一気に高まった。

 今のところ原油価格は大きな反応を示していないものの、実際、封鎖が実施された場合の影響は甚大だ。ホルムズ海峡は最も狭いところで幅33キロメートルしかないが、世界で消費される原油の約2割(日量1700万バレル)がここを通っている。封鎖されれば、それに加え、近隣諸国が余剰生産できる日量300万バレル強も大半が利用不能になるからだ。

 その場合、「原油価格が2008年の過去最高値147ドル(WTI原油先物価格)を超え、150~200ドルに跳ね上がる可能性もある」(野神隆之・石油天然ガス・金属鉱物資源機構上席エコノミスト)と専門家は指摘する。すでに、ペルシャ湾以外の用船需要が急増するなど影響が出始めている。

 ただ、米国はホルムズ海峡が封鎖されれば、軍事行動も辞さない構えだ。イランも米軍の軍事攻撃は避けたいだけに、「封鎖を言い出すのは外交上の駆け引きの一つと見たほうがよい」(宮原信孝・久留米大学教授)との見方が支配的だ。

 むしろ、現実的なシナリオは、封鎖をちらつかせることで市場の不安をあおり原油価格の高騰を維持することだ。17日には韓国も輸入の段階的削減を表明。代替需要の高まりで価格は夏場のピーク時で「120~125ドルに上昇する」(野神氏)と見られる。

 現在、日本がイランから輸入している原油は11年1~6月で約34万バレルと輸入全体の1割程度。石油元売り各社もJX日鉱日石エネルギーがサウジアラビアとの交渉に入るなど、「時間さえあれば代替輸入は可能」(石油業界関係者)と、春以降には切り替えがすむ見通しで、石油確保に混乱が生じる可能性は小さい。

 とはいえ、原油価格が高騰すれば国内経済への影響は必至。ガソリン価格はもちろん、産業界にとってもコスト増につながる。折しも東京電力が17日、火力発電の燃料コスト増により、4月から企業向けの電気料金を平均17%引き上げると発表したばかり。今後、家庭用も値上げされる見通しだ。

 原発再稼働の見通しが立たないなかで、原油高騰が伴えば、さらなる電気料金の値上げが迫られるかもしれない。「化石燃料依存」を強めている日本経済にとって大きな重しとなるのは確実だ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 森川 潤、脇田まや)

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