今、世界地図が大きく変わろうとしている。今まで、いくつも国に分かれていた欧州が、1つの連邦国家=「ユナイテッド・ステーツ・オブ・ヨーロッパ」へと変貌しようとしているからだ。

 10月初旬に行なわれたアイルランドの国民投票で、欧州連合(EU)の憲法ともいえる基本ルール(リスボン条約)が過半数の賛成を得た。これで、EU加盟27ヵ国のうち、残されたハードルはチェコとポーランドの2ヵ国だけとなった。

 両国が国民の支持を取り付けると、いよいよリスボン条約が批准され、EU全体を統括する大統領や外相に当たる政治家が選ばれることになる。それと同時に、意思決定の一部についても、従来の全員一致から多数決方式に変わり、決定の迅速化が図れることになる。

 この流れは、まさに米国並みの欧州合衆国(USE)が実現する布石にもなるだろう。

 EUのこれまでの歩みは、文字通り「苦難の連続」だった。

 欧州地域の復権と安全確保を目指したEU統合に向けた動きが始まったのは、今から30年以上前に遡る。当時の統合の動きは、主に2つのインセンティブに支えられていた。

 1つは、常に戦火に明け暮れた欧州地域の安全保障の基礎を固めることであり、もう1つは、スーパーパワーである米国に対峙できる、強い政治・経済力を持った欧州を復権させることだ。

 ところが、予想通りというべきか、その後各国の利害調整はなかなか進まず、幾度となく暗礁に乗り上げた。ようやく「統合通貨=ユーロ」を実現させたのは、1999年のことだった。

 そして、最後の難関となった「欧州憲法条約」が、2005年にフランスとオランダの国民投票で拒否されてしまった。その後、欧州憲法条約の内容を修正し、リスボン条約と名前を変えて、各国の国民の審判を受けることになった。

 そのリスボン条約の批准が、まさに「あと一歩」というところまで漕ぎ着けているわけだ。