しかし、野党側はどうしても安倍昭恵夫人の証人喚問を要求したいようだ。だが、それが実現したとしても、首相夫妻の関与を証明する決定的な事実は掴めないと思う。佐川前財務局長(現、国税庁長官)の証人喚問は、遂に与党も受けざるを得ないかもしれないため、そこに留めておけばいいのだが、我慢できないようだ。野党側は、なにがなんでも安倍首相や昭恵夫人の「人間性」の問題にしたいということだが、それはなぜだろうか。

 それは、野党側が政策論争を安倍政権に挑むことができず、少しでも安倍首相の信頼を落とす「人格攻撃」をするしかないからだ。例えば、昨年の総選挙時を思い出してみたい。憲法・安全保障政策では政党間に大きな違いがあったものの、国内政策については、実は違いがほとんどなかった。安倍首相は、「全世代の社会保障」を打ち出した。2019年に予定される2%の消費増税を教育無償化や子育て支援など、現役世代へのサービスの向上に当てるというものだった。そして、この現役世代重視という方向性は、小異はあっても、ほぼ全ての政党が打ち出していた。

「税と社会保障の一体改革」によって、2014年4月に消費税率5%から8%への増税が行われ、2度の延期はあったが、2019年9月には10%に再度増税が行われることになっている。しかし、増税分は高齢者社会への対応のための社会保障の充実と、財政赤字の削減に使われることになっている。

 最も重税感の強い現役世代にとっては、増税による負担ばかり増えて、なんの見返りも受けられていない。この不満の解消が重要課題であるということを、ほぼすべての政党が認識していたのである。その結果、自民党から共産党まで、ほとんどの政党が選挙戦で「教育無償化」を前面に打ち出すということになった。

 そもそも、安倍首相が打ち出した政策は、元々前原民進党代表が主張してきた「All for all」とほぼ同じものである。いわば、前原代表の政策をパクったものだと言われても仕方がない。だが、見方を変えれば、安倍首相が政策論争を封じ込んでしまったともいえる。

 政策論争を封じ込まれれば、野党は少しでも安倍首相の信頼を落とすために、「人格攻撃」をするしかなくなったのだ。政策をパクられた前原代表が、「安倍政権を退陣させるために、どんなことでもやる」と言って、民進党を解党して、希望の党と合流したのは、象徴的だったかもしれない。

 また、「排除の論理」を批判されて勢いを失った小池知事も、「ユリノミクス」という経済政策を打ち出してみたものの、国民にアピールすることはできず、最後は「安倍政権に任せるわけにはいかない」と連呼するしかなかった。野党は総じて「安倍首相は信用できないから、安倍政権は倒さねばならない」という主張に終始することになった。