議員定数削減は官僚支配による
「政治の死」をもたらす

 前回、「選挙制度改革」が「政治の死」をもたらすと論じた(第27回を参照のこと)。国会議員の定数削減も、同じである。

 日本の国会議員数は他の先進国と比べて多くない。日本は衆参両院合計752人で、英国(1863人)、ドイツ(724人)、フランス(898人)より少ない。人口10万人当たりの国会議員数でも、日本0.57人に対して英国2.2人、ドイツ0.81人、フランス1.49人だ。(社会実情データ図録などを参照)。これ以上定数削減を行ったら「官僚支配」が強まるのは明らかだ。

 日本の通常国会では、予算審議に加えて、各省庁から出される100以上の法案が審議される。議員の数が少ないと、1つ1つの法案作成に国会議員が関与できなくなる。それを端的に示すのが、民主党政権「政治主導」の失敗だ。

 鳩山政権は、政調会による与党事前審査を廃止し、各省庁内で大臣・副大臣・政務官の「政務三役」が精査した法案を国会に提出する、「政治主導」の政策立案システムを採用した。だが、政務三役の3-4人だけで、膨大な数の法案を1つ1つ精査することは不可能で、むしろ官僚支配が強化されてしまった(前連載第33回を参照のこと)。日本より国会議員数が多い英国では、100人以上の与党議員が政府の役職に就任して政策立案に関わっている。膨大な法案を作成するには、むしろ与党議員の数をもっと増やすべきという考え方もあり得るのだ。

 一方、野党議員は無駄だという考え方もあろう。確かに、民主党は野党時代、「政権担当能力欠如」と言われ、実際に政権を担当したら準備不足を露呈した。ある意味、野党が仕事をしていないという批判は妥当だ。

 しかし、だから野党議員の数を減らせばいいわけではない。英国には「Her Majesty's Opposition(女王陛下の野党)」という考え方がある(第15回を参照のこと)。民主主義の議会における野党の重要性を認識し、野党を育てていくということだ。「政党助成金」を野党だけが受け取ることが出来る制度もある。日本でも「政権交代ある民主主義」を成熟させるには、野党の政権担当能力を高める必要がある。野党は無駄な存在ではない。