21世紀になってオリンピックの運営費は当初の見積もりから最大で数十倍に膨れ上がるのが常態化しているようだ(写真はイメージです)

 東京オリンピック・パラリンピックの大会運営費用や会場整備費用は、当初見込んでいた3013億を遥かに超えて総予算の計上は現時点ですでに2兆円を超えている。東京都民としては「おいおい、話が違うじゃねえか」と呆れるほかないところだが、いったい“オリンピックを運営する”、その裏側ではどのような力学が働いていて、“なぜこうなってしまうのか”。

『オリンピック秘史: 120年の覇権と利権』
ジュールズ・ボイコフ著、中島由華(訳)、早川書房、336ページ、2200円(税別)

 本書『オリンピック秘史:120年の覇権と利権』は、そもそも現代のオリンピックがスタートした瞬間からはじまって、オリンピックの歴史を追うことで、その本当の経済効果、開催することによるリスク、裏側でどのような陰謀や金が渦巻いているのか──といった政治と利権の構造を明らかにする一冊である。たとえば、特に21世紀に入ってからはオリンピックの運営費は当初の見積もりから数倍~数十倍に膨れ上がるのが常態化しているが、その原因のひとつには、正直に費用を提示してしまうと、国民や市民からの反発が大きいからだという(当たり前だ)。

 国際オリンピック委員会(IOC)は、オリンピックを政治的に扱うべきではないとしばしば述べるが、『じつは、オリンピックは何から何まで政治的なのだ。』という冒頭の宣言を筆頭に、これを読むことで腑に落ちなかった点の幾つもに「そうだったのか」と理解が訪れることになる。『つぎのオリンピック開催地に住んでいる友人がいれば、この本を一五冊ずつ送ってあげてほしい。ここに書かれたことばは武器である。オリンピックに翻弄されたくなければ、この武器を装備しなければならない』とは、スポーツライター、デイブ・ザイリンによるはしがきの言葉だ。

軽く歴史の話

 現代のような形でオリンピックが復活したのは意外と最近の話で、19世紀末のことである。第一回はアテネで開催された。その当時はまだまだ差別の色が濃く、オリンピック運営の中心となったクーベルタン男爵は男子のみの大会でなければならないと考えていたし、人種差別もしばらく続くことになる。おもしろいのが、復活版オリンピックの第一回は準備期間が2年しかなく、そのうえ開催国の金が当てにできなかったので、資金不足をめぐるパニックを抑えるために、第一回時点ですでに、開催にかかわる費用をあえて少なく発表していたという。