冬季五輪終了後
朝鮮半島情勢の緊迫感は高まる恐れ
韓国のピョンチャンで開催されている冬季五輪では、各競技以上に北朝鮮のパフォーマンスが目立っていた。北朝鮮の“微笑み外交”の狙いの一つは、言うまでもない。韓国に友好的に振る舞い、南北の融和を重視してきた文在寅(ムン・ジェイン)大統領を懐柔することだろう。
文大統領を懐柔することで、軍事演習などを通して北朝鮮への圧力を強めてきた米韓の関係を分断しようとする考えがあると見られる。問題は、文大統領が、見え透いた北朝鮮の狙いに上手く乗せられているように見えることだ。
北朝鮮は、五輪に選手を派遣するだけでなく、外交の切り札である金委員長の妹(金与正氏)、金委員長に次ぐNo.2の金永南氏までを派遣し、韓国との友好を世界にアピールした。それによって、北朝鮮は南北対話の姿勢を世界に示したいのだろう。
見方を変えれば、国際社会からの制裁などを受けて、北朝鮮にはかなりの焦りが出始めているといえるかもしれない。
一説には、北朝鮮の後見人的な役割を担ってきた中国が、金正恩委員長の独裁体制に見切りをつけ始めたのではないかとの指摘もある。すでに、中朝国境では難民収容を目的とした施設が設営されるなど、その可能性は軽視できない。
ただ、今回の“微笑み外交”を、北朝鮮が本当の意味で対話を重視し始めたと見るのは適切ではない。一方で“微笑み外交”を演出しながら、北朝鮮は核開発を放棄していない。今後も、ミサイル発射実験などは実行される可能性がある。冬季五輪終了後、再度、朝鮮半島情勢の緊迫感は高まる恐れがある。