「横向き寝」が深い睡眠をもたらす

 私が唯一おすすめできる姿勢は「横向き寝」だ。ただし、左右のどちらを下にするかにも注意が必要だ。私が指導しているアスリートには、夜ベッドに入るとき、非優位な側(利き手・利き足と逆側)を下にして胎児姿勢で寝てもらう。

 理由は、あまり使わないサイドのほうが、感覚が鈍いからだ。

 右利きの人は左側を下に、左利きの人は右側を下にする。生まれつき両利きの人は、反射的に身を守るときに「どちらの手が出るか」で判断するといい。その手と反対側を下にする。

 胎児姿勢になるには、膝と腕を軽く曲げて胸の前に軽く引き寄せる。首・背骨・腰がなめらかなラインを描くような姿勢。夜の間、できるだけ長くこの姿勢を保とう(数時間の睡眠の間に動くことはあっても、マットレスがよければ、長時間この姿勢を保てる)。

 背骨と首が自然な位置におさまることで、姿勢の問題が予防できる。いびきや無呼吸が減少する。あなたの脳もこの体勢を好んでいる。利き手と利き足が心臓やその他の臓器、生殖器を保護するため、身体が安全だと感じるのだ。

 私はかつてヨーロッパを旅行していたとき、ときどき終電を逃して行くところがなく、駅で夜を明かすことがあった。そんなとき、地面に横たわり、バックパックを枕にして貴重品を上着の内ポケットにしまい、利き手でおおった。もし誰かがスリを試みても、身体の強いほうのサイドで守れるからだ。

 このような、問題が起きそうな場所で無防備に眠るときと同じ姿勢を、自宅でもぜひ使ってみよう。脳が安全を感じ取り、身体が微動だにしないほどのレム睡眠と深い眠りに入れるようになる(「レム睡眠」や「深い眠り」の正体と効果的な利用法については本書第3章に詳しい)。

 眠る姿勢でその人の性格がわかる、という心理学の文献が出回っているが、私が推奨する眠りの姿勢については、メンタルとフィジカルをしっかりと回復させる目的のみに理由があると考えてほしい。

(本原稿は『世界最高のスリープコーチが教える究極の睡眠術』より抜粋して掲載しています)