昨年6月に改正酒税法が施行され、過度な安売り規制が強化された。1990年代当初年商30億円の酒販店から二十数年で1000億円を超える企業に成長したカクヤス(東京都)。ビール1本から1時間枠で無料配達するという型破りなサービスは、他社の追随を許さない。改正酒税法にどう対応し、成長を図ろうとしているのか。佐藤順一社長に聞いた。(『ダイヤモンド・チェーンストア』編集部 下田健司、野村 光)

改正酒税法施行に対応し
「一元物流センター」開設

カクヤス社長が語る「酒の安売り規制」に立ち向かうあの手この手さとう・じゅんいち/カクヤス社長。1959年東京都生まれ。81年筑波大学卒業後、カクヤス本店(現カクヤス)に入社。93年に3代目社長に就任

──昨年6月の改正酒税法施行後、どのような影響がありましたか。

 当社は昨年、改正酒税法の施行に備え、「一元物流センター」(東京都大田区平和島)の立ち上げに着手しました。改正酒税法は、メーカー、卸売業、小売業それぞれが単品レベルでの原価割れ販売を禁止しています。われわれは、自社のコストはコントロールできるにしても、卸売業のコストまでコントロールできません。運送費が上がれば、それが仕入れ価格に直接、上乗せされる形になるのです。

 そこで、卸売業の物流機能を使わずに、メーカーから直送してもらう新たな物流拠点を開設しようと考えたのです。卸売業の帳合いは残しますが、ビールを始め、全ての酒類がメーカーからこの物流センターに直送され、ここからカクヤスの各店舗に配送されます。

 2016年度(17年3月期)の業績は、売上高1109億円(対前年度比1.3%増)、経常利益7億4800万円(同39.6%減)の増収減益で着地しました。物流センターの稼働を開始したのは昨年8月ですから、16年度は経費がかかり、これが減益要因となりました。