ビール大手4社が業務用ビール類の値上げに踏み切った。米や牛肉などの食材費も、さらには人件費も上昇し、外食業界にメニュー価格値上げの大波が押し寄せている。コスト高にどう立ち向かうか。外食バトルは新局面を迎えた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 山本 輝、臼井真粧美)
居酒屋で席に着いたら、まずはジョッキを掲げて「はい乾杯!」。この風景こそ昔と変わらないが、今やジョッキの中身がビールとは限らない。
人気の串カツ専門居酒屋チェーンである串カツ田中の店内を見回すと、客の半数近くは1杯目からハイボールだ。アルコールのメニュー表ではハイボールが一番目立ち、サイコロを振って出た目によって価格を割り引く「チンチロリンハイボール」を最初から最後まで注文し続ける客は多い。
なぜハイボールを押すのか。「串カツにはハイボールが合う」と店側は説明するが、経営面でのメリットも大きいはずだ。
一般に、料理より原価率が低いものが多いアルコールメニューは居酒屋の稼ぎ頭だが、ハイボールなどに比べてビールは原価率が高く、もうけが小さい。「1杯目はビールという作法を覆したい」と考える居酒屋は少なくない。
そんな中ではあるが、アサヒビール、サントリービール、キリンビール、サッポロビールのビール大手4社は相次いで、外食店などに向けた業務用ビール類を2018年3~4月に値上げすると発表した。値上げは10年ぶり。値上げ幅は公表していないが、10%程度になりそうだ。
理由として各社は、酒類の過度な安売りを規制する改正酒税法が6月に施行されたことや、物流費の高騰などを挙げている。
業務用の値上げはビール類以外の酒類でも一部行われるが、外食店にとって、もともと原価率が高いビールは仕入れ値の上昇分を吸収できる余地がとりわけ小さい。外食各社はメニュー価格の値上げを検討し始めている。