個人の動機を優先する
「らせん上昇」と「ジグザグ出世」
篠田:個々の仕事についてはモチベーションの部分に関わってきますし、ほぼ日の仕事の原動力は、個人として「発信したい」こと、つまり「動機」です。その動機は上から与えられるものではないし、動機がなければその人自身が発するものはない。それだとお客さんを喜ばすことはできないですよね。
吉里:そうなると、給料の査定は、誰が決めているんですか?
篠田:R不動産と違い、「ほぼ日」の仕事は、あなたはこれだけ稼ぎましたねと明確化できないので、大雑把に言うと、年功序列が一番近いイメージです。人は長く働く中で、伸びる時期と伸びにくい時期があります。動機をしっかり持ち、一生懸命さぼらずにやっていれば、螺旋階段を上るようにまわり道であっても、上にあがっていくことができる。「あっ、この景色は見たことがあるな」と思っても、それが一段上から見ているようになる。ある場所は駆け足でのぼれたけど、ここはゆっくりだったということもある。人の成長とはそういうもので、その一つひとつの上げ下げはしないという考え方です。
ただ、おおまかな区切りは設けています。チームメンバーとしてはやっていける、小さいチームを引っ張っていける、複数のチームを動かしていけたり社外から望まれるくらいの力がある。そういう大雑把な段階だけ設けて、その境目は、人事の仕事をしているメンバーと役員全員で決めていくというやり方ですね。
吉里:僕らは、そうした評価の仕組みは作ってこなかったので、徐々に必要になってきたというフェーズかな。もし今のスタイルで出世があるとしたら、「ジグザグ出世」なのではないかと思っています。
従来の出世型、つまり課長になり部長になり重役になり社長を目指す、という今までの組織の生き方を「垂直出世」とすると、会社を辞めて、いろんな分野に手を広げ、その表面積で生きていくのが「水平出世」。東京R不動産では、今年は水平に進み、来年は垂直と決める、「ジグザグ出世」が可能だなと。
売り上げがトップクラスで走り続ける垂直型だけでなく、横に横に、人脈や活動の場を広げていく水平型の仕事もしていく。そのジグザグ出世志向が、組織にいい影響を与えていくと思っています。