さらに、妻の菊代(加藤治子)が病気で倒れたため、菊代が退院するまでの間、大阪市内の団地に住む長男の治雄(西郷輝彦)、桂子(十朱幸代)の夫妻が冬吉を預かることになります。

介護保険制度改正で政策迷走、30年前の映画を見れば原点が分かる『花いちもんめ』DVD発売中/価格:4500円(税込4860円)/発売元:東映ビデオ 販売元:東映

 治雄はスーパーの店長、桂子は花屋でアルバイトとして働いており、いわゆる共稼ぎ。菊代が急死したことで、2人は冬吉を自宅でケアすることになったわけですが、冬吉は夜中に電気がまのご飯を食べたり、風呂場で用を足そうとしたり、夜中にガスの元栓を開けたり、孫(つまり治雄と桂子の子ども)に襲いかかろうとしたりするなど、奇行がエスカレートします。

 こうして自宅にいる時間が長い桂子に、介護負担がのしかかります。思い余った治雄、桂子夫妻は冬吉を老人病院に預けることを決めます。治雄は冬吉を病院に預けた後、少し後ろめたさを見せつつ、家族がそろった食卓でケーキを食べつつ、こう述べます。

「いや〜、おじいちゃんを病院に入れて、かえってホッとしたよ。ま、もともと病気なんだからな。病院で専門家の先生に診てもらうのが一番だ。それにおんなじようなお年寄りがいっぱいいて寂しくないし、完全看護で心配もいらない」

 しかし、見舞いに訪ねた治雄は、老人病院の実態を見てがくぜんとします。薄暗い寝室に、20人ぐらいの高齢者がオムツをつけて寝かせられている上、ナースコールは切られており、暴れないように冬吉の左腕はベッドの手すりに縛りつけられています。いわゆる「身体拘束」です。そこには専門家の先生が診てもらう雰囲気や、「完全介護」で安心な様子なんてどこにもありません。