女性芸能人の“すっぴん公開”と言えば、以前は罰ゲームになり得るほどのタブーだった。それが最近、自ら進んですっぴんを披露する芸能人が増えている。その公開ブームは、いわゆるテレビタレントはもちろん、女優、モデル、アイドル、歌手、アナウンサーに至るまで波及している。
自身が運営するブログ上に写真をアップするパターンが最も多いが、去る1月14日、バラエティ番組『サタネプ☆ベストテン』(TBS系)のスペシャルで、「プロが選んだすっぴんが見たい女性芸能人ベストテン」が放送されるなど、インターネットでのブームが他メディアにも広がっていると言えそうだ。ちなみに、同番組でのすっぴんネタはこれが2回目で、全く同じテーマの第1弾(2011年11月12日放送)の好評を受けての放送となった。
彼女たちが意図してやっているかは不明だが、1つ確実に言えることがある。それは、「すっぴんは話題になる」ということ。そもそも芸能人ブログは、彼らのプライベートを垣間見ることができることで人気だが、さらにすっぴんともなると、そのインパクトは大きい。モデルの小森純が昨年すっぴん写真をブログに掲載したところ、普段は1日に100万ほどのアクセスが、翌日には250万近くまでアップしたことは有名だし、佐藤江梨子がすっぴん写真を公開した際にはブログにファンが殺到し、一時アクセスが困難になる事態が生じたらしい。
普段の何気ないショットがすっぴんというだけで取り上げられ、ネットのトピックスのタイトルを飾るのだから、こんなにおいしい手はない。むしろ、話題作りという目的ありきで公開している策士も少なからずいるのではないか、と勘ぐってしまう。
一方、受け取り手の反応を見てみると、実に様々な感想があって面白い。「すっぴんの方がきれい!」「意外にあどけなくてかわいい!」など好意的なものや、「身近に感じる」など共感型の意見もあれば、「普通のおばちゃんに見える……」「これはすっぴんではなく、すっぴん風メイクだ!」「奇跡の一枚を披露しているにすぎない」など、痛烈な批判もある。最近では、ブログのアクセス数を稼ごうとする“すっぴん公開”自体に、食傷気味の人も増えているようだ。
そこで、少し整理したいのだが、今のトレンドは「すっぴん“公開”ブーム」であって、「すっぴんブーム」ではない。一部では、不況の影響や肉食系女子の台頭などを引き合いに、すっぴんの女性自体が増えていると論じる向きもあるようだが、世間を見渡してみると、トレンドはむしろその真逆に走っていると思われる。
「整形メイク」という言葉をご存知だろうか。まるで美容整形をしたかのような劇的な変化を叶えるメイクテクニックのことであるが、これが今、実に世の中を賑わせているのだ。女性誌で特集を組まれることも多く、動画サイトには実際に女性がすっぴんからメイクを開始して、全くの別人に変身するまでの過程を映した動画がずらりと並んでいる。その恐ろしいまでのメイクの力に、衝撃を受けた人も多いはずだ。あたかも、すっぴん顔そのものが美しいかのような印象を、見る者に与えてしまうのである。メイクでなりたい顔になる――。これこそが今の美容トレンドなのだ。
つまり、「すっぴん公開」と「整形メイク」という2つのコンセプトが、一連のブームの両輪になっているのではないかと、筆者は考えるのである。メイクをして綺麗なのは当たり前。そこにあって、「メイクを落としてすっぴんでも“やっぱり”芸能人は綺麗」だからこそ話題になるのだ(本当にすっぴんかどうかは別にして)。話題が話題を呼び、このすっぴん公開の連鎖を生んでいるのではないか。
メイクを武器に化ける者、すっぴんを武器に露出を図る者、どう策を講じようが全くもって個人の自由だが、策士、策に溺れぬよう……。私も1人の女性として肝に銘じておきたい。
(おおたゆうこ/5時から作家塾(R))