「1万円もらえるから…」安易に“合格体験記”を書いた受験生がヤバいワケ『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生(文科二類)の土田淳真が教育と受験の今を読み解く連載「ドラゴン桜2で学ぶホンネの教育論」。第132話は、大学入試後の「得点開示」について考える。

東大の配点はブラックボックス

 東京大学現役合格を目指す龍山高校の生徒たち。指導をする東大合格請負人・桜木建二は、たった0.1点の差で合否が分かれる残酷さについて、他の先生と話し合うのだった。

 受験生のとき、塾の先生にこんなことを言われた。

「合格するまでは一番点をとった人がえらいが、合格した後はよりギリギリで合格した人がチヤホヤされる」

 これは言い得て妙というものだ。多くの国公立大学では、希望すれば入試の得点開示を行える。実際に自分が何点であったのかが、科目ごとにわかるのだ。東京大学では、この得点発表のタイミングが「オリ合宿」とかぶる。

「オリ合宿」とは、新入生同士、あるいは新入生と上級生の親睦を深めるためのオリエンテーションとして、言語別のクラスにわかれ、4月のはじめに1泊2日で関東近郊へ旅行をする行事だ。このオリ合宿の最中、あるいは直前に得点の発表が行われるため、入試の得点が必ずと言っていいほど話の種になる。

 もちろん高得点で合格した人は一目置かれることになるのだが、それよりも合格最低点付近の人、一部の科目だけ突出して高得点な人など「面白い点の取り方をした人」が注目される。たいていは入試の点数などすぐ気にしなくなるのだが、中にはやけに友達の点数を覚えている人がいて、ことあるごとに持ち出してくる点数マニアもいる。

 配点に関していえば、「わからない」のが本音だ。塾や予備校の模試でも配点が違っており、また採点基準もブラックボックスだ。1つ言われているのが、答案が出そろったところで初めて採点基準をきめる、科類(文科一類や理科三類など)によって採点基準が違うというものだ。

 そのため、難易度や科類によって、同じ答案でも採点が異なることがあるという。とはいえ、大学が公式に発表したものではなく、塾や予備校が勝手に推測しているものなので、どこまで本当かはわからない。

配点を探ろうと「漢字以外を捨てた」猛者

漫画ドラゴン桜2 17巻P25『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

 中にはこんな猛者もいる。東京大学の国語では、毎年漢字の書き取りが3問出題される。これが1問1点なのか2点なのかは長らく議論の的となってきた。そのため、漢字の配点を突き止めるためだけに、国語で漢字以外を回答しないという受験生が現れた。ちなみに本人は他の科目だけで合格最低点以上をとっている。それによると、2問の正解で4点をとったため、配点は2点だろうという推測だ。

 この他にも、英作文が何点なのか、世界史の一問一答は1点なのか2点なのかなど、今でも議論されているポイントは多い。配点や採点基準をより正確に把握するため、入試が終わると受験生は合否に関わらず、塾や予備校に再現答案を提出するようにと言われる。

 塾にもよるが、再現答案を提出すると数千円〜1万円ほどがもらえるため、改めて情報獲得競争の激しさを感じる。とはいえ、受験生も自分の答案を完璧に覚えているわけではないので、ある程度ノイズは入るのだが。

 ちなみに、合格後に(場合によっては有償で)書くように言われる合格体験記の執筆には、慎重になった方がいい。基本的には塾の後輩以外の外部に公表されることはないのだが、合格後の高揚した精神状態で書いたものが、SNSなどでさらされる事例がないわけではない。

 特に、有名になったり事件を起こしたりすると、過去のものでも掘り返されることがある。再現答案にしろ、合格体験記にしろ、自分の経験を安売りしないのが大切なのかもしれない。

漫画ドラゴン桜2 17巻P26『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク
漫画ドラゴン桜2 17巻P27『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク