「今後の中長期的な株主還元政策について、引き続きご検討を頂ければと存じます」
2月末、大手を中心とした生命保険会社10社が連名で、東証1部上場企業に対し、そうした文面の書簡を送り始めた。
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送付対象数は約100社。配当性向が10期連続で30%未満、自己資本比率が51%以上、社外取締役が不在、情報開示が不十分などといった条件で抽出しており、客観的なデータを基にして、上場企業としての立ち居振る舞いに「課題」があると判断した企業だ。
同条件を基に、本誌が財務情報を調べたところ、計測機器大手のキーエンスや地域銀行などが該当しているようだ。
生保各社はこれまでも、上場企業の株を大量に保有する機関投資家として、株主還元の向上などを個別の対話の中で求めてきたが、各社が連帯して“団体交渉”するのは今回が初めてという。
なぜ今、団体交渉に踏み切ったのか。背景にあるのは、監督当局の金融庁による「日本版スチュワードシップ・コード」の推進だ。
昨年5月、責任ある機関投資家としての諸原則を定めた同コードが改訂され、その中に「他の機関投資家と協働して対話を行うこと(集団的エンゲージメント)が有益な場合もあり得る」という文言が追加されたのだ。