文言だけを見れば、生保各社には何ら対話で協働する義務はない。しかしながら、企業との対話が「形式的なものにとどまっている」という目を金融庁から向けられている生保各社にとっては、汗をかいていることをアピールする大きな材料になるわけだ。

共同保有という難題

 一方で、今回の書簡には、企業に対して「検討のお願い」にとどまってしまい、実は団体交渉にすらなり得ないというもどかしさが垣間見える。

 もし、お願いの域を飛び越え、生保各社が集団となって、企業に配当性向の引き上げといった交渉(重要提案)をしてしまうと一体どうなるか。

 その場合、生保各社が株式の共同保有者と見なされ、大量保有報告書を提出する必要性が、ケースによっては出てきてしまうという。

 そのため、企業に対し「株主総会で、連帯して反対票を入れますよ」という実効性のある“脅し文句”は使えないわけだ。

 書簡を送り付けられた企業側も、そうした点を見透かしているとみられ、どれだけの企業が検討や対話に応じるのかは未知数だ。

 書簡を送った生保10社が保有する株式の総額は、2017年末で24兆円にも上る。機関投資家としてその巨大なパワーを正しい方向で有効活用するためにも、共同保有の在り方をはじめ、当局と一体となった取り組みが今後求められそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)