多くの企業がデジタルイノベーションに向けてさまざまな変革を推進しようとしている。しかし、従来の業務プロセス改革と異なり、文化・風土、組織、制度、権限、人材など企業の根幹に関わる多岐にわたる変革が求められることから、そのハードルは高く一気に飛び越えることは困難といえる。今回は、このハードルを2段階方式で超えるデジタル革新推進のアプローチを紹介する。
デジタル革新における企業のステージ
多くの企業がデジタル技術を活用したイノベーションに向けてさまざまな変革を推進しようとしている。しかし、業種業態や業績の好不調などによってデジタライゼーションの潮流に対する姿勢はさまざまだ。Amazon社やUber社などのディスラプター(破壊者)の動向、GE社などの海外の先進事例などに対しても対岸の火事と捉える企業も少なくない。
一方、経営者は変革を唱えるが、既存の事業責任を抱える現場部門が保守的な姿勢を採る「笛吹けども踊らず」という企業もあれば、市場や顧客の矢面に立つ現場部門は危機意識を強く持っているが、「あと何年かは今のままで大丈夫」と過去の成功体験に縛られた経営層が「重石」となっている企業もある。デジタライゼーションの重要性は広まりつつあるものの、これを戦略の中核に据えて全社一丸となって取り組むための準備が整っている企業は必ずしも多くない(図1)。
このような違いから企業の変革に対する姿勢には大きなばらつきがあるため、イノベーションの推進における処方箋は1つではない。