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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

東大9月入学論議はコップの中の嵐
問われるべきは教育の密度だ

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第54回】 2012年2月22日
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 この数字を聞いて一同ショックであった。筆者はその後カリフォルニア大学バークレー校工学部の教授から同校工学部大学院への願書動向について聴取したが、その教授が属される学科では日本からの応募者数は応募総数の約0.5%であるとのことだった。ただ、この数字には日本の大学から応募してくる韓国人・中国人留学生も含まれるので、日本人に限ると0.3%以下になるという。両大学で、大きな差はない。

中国人留学生は増加率No.1
日本人留学生は減少率No.1

 全米の統計を見てみよう。米国で学ぶ外国人留学生の総数は72万人である。そのうち最大は中国で15万人を占め、2年続けてトップである。2位はインドの10万人、3位は韓国で7万人。日本人は2万1千人程度しかいない。

 さらに気になるのは増加率だ。2010年から2011年の間に中国人留学生は23%増加しているのに対し、日本人留学生は14%減少している。中国の増加率はNo.1で日本の減少率もN0.1である。中国人留学生が多いのは米国だけではない。英国、カナダ、オーストラリア、日本でも最大の派遣国になっているし、フランス、ドイツでも第二位の派遣国である。中国の勢いは凄まじい。

 一国の経済成長率は留学生の数にも表れているように思う。中国、インドは人口が多いので、これだけ多くの留学生を出しても人口に対する比率では高くない。立派なのは韓国である。人口は日本の半分以下なのに、米国だけで日本の3.5倍の留学生を出している。人口比で見ると9倍になる。これはSamsungの躍進とPanasonic、Sony、Sharpの赤字転落と無縁ではないように思う。日本は海外で活躍できる人材の育成に、大きなお金を使っていないのである。

 70-90年代には日本企業は多くの留学生を派遣していた。だが、海外留学経験者・海外勤務経験者を「よそ者」のごとく扱い、社内人事は国内でしか通用しない人材を温存してきた企業があまりにも多かった。日本の市場は人口減少で収縮していく市場である。日本市場だけを当てにした戦略を取り続ければ、縮小均衡になることは分かっていたはずだ。それでも方向転換を図らなかった。失望した社員は外資へ逃げた。

 昨年あたりから海外の市場に目を向けなければならないことが、反省点として言われるようになった。だが、かつて投資した人材はいまはいない。あわてて外国人を採用し始めているのだ。ガラパゴス化した人材育成政策が、いまそのツケを払わされている。

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安藤茂彌
[トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ

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シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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