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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

東大9月入学論議はコップの中の嵐
問われるべきは教育の密度だ

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第54回】 2012年2月22日
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 入社式の弊害はほかにもある。正社員と非正社員との格差を作ってしまったことだ。日本人の間でも問題化しているのに、外国人はそれ以上にこの制度を嫌がるだろう。これを機会に一斉採用を廃止・縮小して、日本人・外国人を問わず通年採用を基本にするべきと思う。

 カジュアル衣料品大手の「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは来年春から一斉採用を止めて通年採用に移行することを決めた。さらに大学一年生でも採用するとした。在学中はアルバイトをしてもらい卒業と同時に店長になってもらうことも匂わせている。経団連は「学生の本分は勉強ではないか」と反発しているが、裏返してみれば、これは日本の大学教育への挑戦状でもあるように思う。

 日本の大学には良いところがたくさんある。青春時代に「人生とは何か」を語り合い、天下国家を考え、日本のリーダーはどうあるべきかを論じ合う。多感な思春期の人格形成にどれほど役立ったかと、懐かしく振り返る人も多かろう。

 だが時代は変わった。日本の大学は日本だけにしか通用しない制度を維持できなくなった。東大も最高学府として胡坐をかいている事は許されなくなった。グローバル時代には大学も国際競争に参加せざるを得ない。Evidence-basedである。「東大がそんなに立派な大学なら証明してみろ」。そうした挑戦状を、海外留学生と国内成長企業から突きつけられている。

 東大の9月入学は大学国際化の第一歩に過ぎない。やらなければならないことは山ほどある。9月入学への制度変更に5年かかるとしているが、そんなに悠長なことを言っていられるのだろうか?4月から8月までの授業料収入がなくなるので、変更には金がかかるのだ。

 国家予算の最大の「金食い虫大学」は東大である。5年の間に日本が破綻国家になったらどうする?東大は自ら必要と信じたことを、周囲の反対を顧みずに直ちに実施すべきである。東大が本気で変えようと思えば、他の大学も日本企業も真剣に変革を考えるだろう。シリコンバレーからの助言、それは「すぐやれ、国家が破綻する前にやれ」。

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安藤茂彌
[トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ

シリコンバレーで考える 安藤茂彌

シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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