ネットワーク上のITソリューションを活用するクラウド・コンピューティング。小売業でも現在、中小規模の食品スーパー(SM)に広まりつつある。HC業界においても、プライベート・クラウドを導入する動きが出てきた。流通業におけるクラウド・コンピューティングの活用状況を追った。
パブリックとプライベートの2種類
手持ちのコンピューターでソフトウエアを管理・利用する形態ではなく、ネットワーク上に存在するサーバーからサービスのかたちでアプリケーションを使う「クラウド・コンピューティング」が登場して、7~8年がたつ。
このクラウド・コンピューティングには、不特定の複数の企業が共通に使用する「パブリック・クラウド」と、個別企業向けの「プライベート・クラウド」の2種類がある。不特定の企業が共通のシステムを使用する「パブリック・クラウド」の方が、「クラウド・コンピューティング」の基本概念に近く、「パブリックでなければ、クラウドとは言わない」という意見まであるほどだ。そんな「パブリック・クラウド」の利用が、小売業でも始まっている。
活用が広がっているのは中小SMだ。SMの場合、取扱商品は賞味期限のある食品で、厳格な商品管理が求められる。そのため、ITによる管理が求められるのだが、中小SMは、大手のように多額のコストをかけたり、要員を確保することが難しい。そこで、ITソリューションを割安で利用する方法として「パブリック・クラウド」の活用があるのだ。システムは業界標準的なものになるが、月単位の使用料だけで利用できる点がメリットだ。
中小SMで採用が増加中
流通小売業向けにITソリューションを提供しているサイバーリンクス(和歌山県/村上恒夫社長)では、2005年からSM向けにパブリック・クラウドのサービスを提供している。当初、年商300~500億円の規模のSMを対象に開始したサービスだが、現在では10~1000億円へと対象となる企業の領域が拡大した。現在、同社のパブリック・クラウドの顧客数は約70社だが、最近は毎年15社ほど増加しており、順調に顧客数を伸ばしている。
対象となる企業の領域が拡大した背景には、「SM業界における熾烈な競合がある」(リテイルネットワーク事業部・三浦明課長)という。IT武装にはコストがかかるが、これを低コストで実現するのが、「パブリック・クラウド・サービス」の活用なのだ。