片頭痛持ちは心筋梗塞や脳卒中になりやすい、デンマークでの調査より

 日本の片頭痛人口はおよそ840万人、1対3で女性に多い。発症年齢は男性20~30代、女性30~40代が最も多く、慢性的な片頭痛に悩む現役世代は少なくない。また、女性はホルモンの関係で10代の発症率が男性のおよそ3倍にもなる。10代の少女が「頭が痛い」としょっちゅう訴えるようなら、学業に支障がでる前に頭痛外来を受診するといいだろう。

 現役世代の片頭痛持ちは脳・心血管疾患に気をつけたい。デンマークのオーフス大学からの報告を参照すると「片頭痛持ちは、一般集団に比べて心筋梗塞や脳卒中になりやすい」のだ。

 調査は、全国規模の患者登録調査データを使い、デンマーク在住の片頭痛患者5万1032例と一般集団51万0320例を比較している。診断時の年齢は35歳(中央値)、男女比は3:7だった。追跡調査期間は19年間である。

 解析の結果、心筋梗塞の発生件数は1000人あたり、片頭痛群25件、一般集団では17件で、脳血管が詰まって生じる脳梗塞はそれぞれ45件と25件、出血性脳卒中は11件と6件だった。

 補正したリスク比では、片頭痛群は一般集団よりもおよそ1.5倍心筋梗塞になりやすく、脳梗塞は2.3倍、出血性脳卒中はおよそ2倍と、それぞれ有意にリスクが高いことが判明している。

 特に片頭痛と診断後、早期の発症率が高く、診断後1年以内の脳梗塞の累積発症リスクは実に8.37倍、出血性の脳卒中は7.89倍にもなることが示された。

 大きな疾患以外にも静脈血栓塞栓症(いわゆるロングフライト症候群)や、心臓の上半分にあたる「心房」の筋肉が小刻みにけいれんし、血液をうまく送り出せない「心房細動」のリスクも上昇。心房細動は良性疾患だが、心房にたまった血液のよどみが血栓になり、脳動脈を詰まらせ致死的な「心原性脳塞栓症」を引き起こす。

 何にせよ片頭痛持ちは男女を問わず、血圧・血糖・中性脂肪管理と禁煙、適度な運動を心がけよう。頭痛は身体からの注意報なのだ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)