英語の社内公用語化を推し進めてきた楽天は今夏、グループ全社員を対象とする完全実施に踏み切る。この途方もない取り組みに挑戦する同社の状況をレポートする。
「Good morning!」
2010年2月1日、毎週1回、朝8時から行われる全体朝会の冒頭で、三木谷浩史会長兼社長が全社員を前に突然、英語で挨拶を行った。そして、この日を境に社内の英語化が猛スピードで始まることになる。
同年春には取締役会ほか経営会議や全体朝会などの言語はすべて英語となった。社員食堂のメニューまでが英語表記となり、全社員が英語化を実感するようになる。
8月には社内規定に英語公用語化が明記され、決算説明会も英語となった。
社内会議、イントラネット、メール、議事録、会議資料などは段階的に英語化が進んでおり、今年7月からは全部門で完全実施される。対象は派遣、アルバイトを除くグループ全社員だ。社内の私語は日本語が許されるが、「英語が推奨されることになる」(野田公一執行役員)という。
英語の社内公用語化を
進める三つの理由
楽天が英語を社内公用語とする目的は三つある。
一つ目はグループ企業における情報共有だ。主力のEC(電子商取引)事業では07年11月に台湾で合弁会社を設立後、海外展開を推し進め、現在、日本以外の9ヵ国・地域に展開している。全社員に占める外国人の比率は10%超、国籍は30ヵ国以上に上る。
会議で通訳を介するのは時間とカネのロスになる。さらにネット業界では最新のニュースやテクノロジー情報の多くが英語で発信されるため、スピードをもって世界の競合に打ち勝つためには英語の理解が必須といえる。