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データサイエンティストの冒険

どうすれば日本企業はアナリティクスを
イノベーションにつなげられるのか?

工藤卓哉 [アクセンチュア]
【第20回】 2018年3月15日
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データ活用の道程には
3つの段階がある

出典:アクセンチュア

 かねがね企業におけるデータ利活用には3つの段階があるとお伝えしてきました。1つ目は、上述したような単一の組織内での利活用(個別最適)にとどまる段階です。2つ目は部門間の枠を超え、これらを横展開し、全社的な活用(全体最適)を目指すアプローチです。そして、最後の3つ目は既存のビジネスの枠に囚われず、民間と公共、企業グループや業際の壁を越えたオープンイノベーションを誘発するような取り組みです。

 日本企業の多くは企業規模の大小、業種業態を問わず、いまだに第1段階で立ち止まっているケースがほとんどです。第2段階に進んでいるのは、いまのところグーグルやフェイスブックなど、ごく一部の海外企業に限定されています。こうした理由のひとつには、日本企業では全体を統合する意志とデータを集積し活用するためのプラットフォームの構築が疎かにされているからではないかと認識しています。

 その具体例として、私が過去に手がけたあるコールセンター運営企業のデジタル変革事例をご紹介しましょう。同社は顧客数の増加に伴う入電数と待ち時間の増大という悩みを抱えていました。

 仮にコールセンターの業務効率改善をゴールに設定した場合、オペレーターの増員や電話回線の増設などにより課題は解決するようにみえるかもしれません。確かに、顧客対応の迅速化を図るには、人や設備の増強は当面の有効な手段と言えるでしょう。しかし、コールセンターというのは本来、重要な顧客接点であるべきです。つまり、単に顧客の要望や苦情にタイムリーに対応し、それらのデータを集積するだけの「守りの拠点」として位置づけてしまっては、いつまで経っても個別最適から抜け出せません。

 ここで重要になるのが全体最適の視点です。つまり、コールセンターに直接電話をかけてきた一人ひとりの顧客に対する応対品質を上げるという目の前の課題に対処しつつも、その背後に隠れたより多くの潜在的な需要を探り出し、顧客体験価値の向上につなげる一段上の目線です。

 オペレーターが日々受け取る顧客からの情報の中から、本当に顧客が求めているサービスやコンテンツに関するデータを引き出すため、人工知能(AI)を駆使した機械学習によってコールセンターに蓄積された膨大な問い合わせ情報を解析した上で、AIチャットボットを導入しました。その結果、24時間の顧客対応や省力化などを実現したほか、さまざまな顧客から得られたインサイトを分析するプラットフォームとしてグループの枠を超えてデータを共有・活用できる仕組みを整備しました。

 これにより、新たな潜在需要を喚起させる新サービスの開発や関連したマーケティング・キャンペーンの実施など、全社レベルでレベニューサイド(売上増加)を狙える体制を構築することができたのです。

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工藤卓哉
[アクセンチュア]

Accenture Data Science Center of Excellence グローバル統括 兼
アクセンチュア アプライド・インテリジェンス マネジング・ディレクター
ARISE analytics Chief Science Officer (CSO)

慶應義塾大学を卒業しアクセンチュアに入社。コンサルタントとして活躍後、コロンビア大学国際公共政策大学院で学ぶため退職。同大学院で修士号を取得後、ブルームバーグ市長政権下のニューヨーク市で統計ディレクター職を歴任。在任中、カーネギーメロン工科大学情報技術科学大学院で修士号の取得も果たす。2011年にアクセンチュアに復職。 2016年11月より現職。 データサイエンスに関する数多くの著書、寄稿の執筆、講演活動を実施。


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近年テクノロジーと数理モデルによってもたらされるアナリティクスが、ビジネスを大きく変えようとしている。データの高度な活用から次の打ち手を見出す力、アナリティクスの決定的な優位性を最前線から解説する。

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