がん医療の三大療法である手術、放射線、薬のいずれにも大きな変化が起きている。ロボット支援手術で健康保険適用のがん種が一挙に増えた。放射線治療の一種、粒子線治療で前立腺がんの保険適用が認められた。薬物治療では2014年に発売された免疫治療薬「オプジーボ」の適応対象がどんどん広がり、価格がどんどん下がっている。『週刊ダイヤモンド』3月17日号の第1特集「大衆化する高額・最先端手術 がん医療の表と裏」では激変するがん医療の内情を明らかにしており、そのオンライン編集版を複数回にわたってお届けする。今回のテーマは「粒子線治療」だ。(「週刊ダイヤモンド」編集部)
「粒子線治療」には
「陽子線治療」と「重粒子線治療」
都内で会社を営む男性は、前立腺がんを告知された。幸い転移は見つからず、医師は手術を勧めつつも「ほかにも選択肢はあるので自分で決めてほしい」と判断を委ねた。
ほかの選択肢とは、切らない放射線治療だ。機器が進化し、従来の治療法のほかにも、コンピューターを使って放射線の当て方を改良した「IMRT(強度変調放射線治療)」などが選べる。
さらに気になったのが、従来とは異なるタイプの「粒子線治療」である。「陽子線治療」と「重粒子線治療」の二つがあって、どちらもがんを殺す力が強かった。
悩んだ男性はセカンドオピニオンを求めて渡米した。そこで陽子線治療を勧められ、心は決まった。男性は日本に戻り、先進医療を実施する病院で陽子線治療を受けた。