国家資格の管理栄養士は
市民権を得られていない

 なぜ国家資格保持者である管理栄養士が、これほどまでに不遇な扱いを受けるのだろうか。その理由の一つとして、満床150人規模の介護老人保健施設で働く現役の管理栄養士・神崎愛子さん(仮名、38歳)はこう説明する。

「世間一般的に栄養士と管理栄養士の違いが知られていないのと同じように、雇用主である企業も管理栄養士が何をする人なのかをよく知らず、料理や、関係のない事務作業をさせてしまう傾向にあります。それに、厨房の中では調理師や料理人の方が強く、彼らにしてみれば『管理栄養士の連中は料理もしないくせに、頭でっかちに栄養の計算ばかり言いやがって!』と取り合ってくれないケースも多いのです」(愛子さん)

 さらに愛子さんの職場では、介護施設ならではのほころびも出始めているという。

「年々、介護保険料が値上がりして施設を利用する高齢者の自己負担額も増えている中で、もし施設の食事の質を落としたりしたらクレームや退去者が続出してしまいます。そうならないために、施設側は栄養部の人件費を極力抑え、かつ料理のクオリティは上げようとします。それで、私たちの労働環境はどんどん劣悪になっていくんです」(愛子さん)

 勤続年数15年の愛子さんでさえ月給は額面20万円には届かず、管理栄養士手当は5000円で、ボーナスもわずか。こういった労働状況に耐えかね、せっかく苦労して国家資格を取って働き始めたものの、業界から逃げ出す人が後を絶たないのだ。

「管理栄養士として、定年まで働くというのは今では珍しい話なのかもしれません。それに一度退職してしまうと、なかなか戻るのが難しい業界でもありますからね。というのも、ひとえに管理栄養士といっても病院や施設、保育園、メーカーなど業種がバラバラすぎて、潰しが利かず門戸が狭いという現実があります。また国の安全基準や指針も頻繁に変わるので、常に現場に近いところで勉強を続けていないと、すぐに知識的に付いていけなくなるんです」(愛子さん)

 最後に“将来、自分の子どもが管理栄養士を目指すと言ってきたらどうするか”と尋ねてみたところ、どういう偶然か3人とも「どうせ栄養学を学ぶなら薬剤師を勧める」と同じ答えだった。どうやら最も心身の健康管理を必要としているのは、管理栄養士自身なのかもしれない。