Aさんにとっては、生活保護費と就労収入の関係を理解できないことかもしれない。Bさんにとっては、障害者手帳の対象にはならない程度の軽度障害の数々かもしれない。軽度の身体障害・知的障害・精神障害が重複しているものの、いずれも障害者手帳の対象にならない場合、一人の人間としてのBさんの「障害」は公的に認知されず、もちろん、どのような障害者福祉の対象にもならない。地方に住むCさんは、生活保護開始とともに手放した自動車が障壁となって、就労活動がままならないのかもしれない。

 いずれにしても、彼ら彼女らの「働きたい」は、「働けるのなら……」という嘆きとセットになってしまう。なぜ働きたいのか? 「自分は社会にとって必要な存在である」ということを確信するために、最も容易な方法は、就労して収入を得ることだからではないだろうか?

 とにもかくにも、近年の日本政府は、公的扶助や公的福祉を「なるべく使わせない」という方針で動きつづけている。しかし生活保護で暮らす人々も、可能なら就労して生活保護を脱却したいと考えていることが多い。需要と供給のマッチングには、大きな問題はなさそうだ。

 実のところ、生活保護と就労支援の「いま」は、どうなのだろうか?

「働けるのに働かない人」は、どこにいる?
データが語る壮絶な自助努力

 生活保護に関する主要な公的統計データは、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)がまとめて公開している

 就労による生活保護脱却を、厚労省用語で言い換えると、「働きによる収入の増加・取得」を理由とした「生活保護廃止」だ。それらのデータは、社人研の上記Webページにある表のうち、第13表「保護の廃止理由別被保護者世帯数の年次推移」、および第14表「保護廃止世帯数(理由、世帯類型、構造別)」に含まれている。

 ここには1956年~2014年のデータが含まれているのだが、とりあえず2000年以後に限って全世帯・その他の世帯・母子世帯の就労による生活保護脱却のようすをグラフ化してみると、以下のようになる。