総予測2026Photo by Takayuki Miyai

旺盛な建設需要を背景に好業績が続くゼネコン業界だが、労務費や資材価格の高騰で建設費用がかさみ、再開発事業がストップしたり、人手不足が深刻化したりしている。特集『総予測2026』の本稿では、足元に横たわる課題にどう取り組んでいくのか、日本建設業連合会の宮本洋一会長(清水建設相談役)に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 宮井貴之)

相次ぐM&Aの狙いは
単なる事業量拡大ではない

――主要ゼネコンは2025年3月期決算に続き、26年3月期も好決算が続く見通しです。ゼネコン業界を取り巻く経営環境をどう分析していますか。

 各社の経営努力が実を結んだ結果でしょう。ただ、他業種に比べると利益率は決して良くありません。そういった意味で(ゼネコン業界は)、まだ道半ばです。

 企業関係者からはきちんと価格転嫁し切れていないという声をよく聞きます。25年に改正建設業法(労働者の処遇改善、資材高騰に伴う労務費のしわ寄せ防止、働き方改革と生産性向上を柱にしたもの)が施行されたので、発注者がわれわれの要望を聞いてくれるようになってきました。でも必ずしも「分かった」となるわけではありません。今は建設需要があるので、低利益率の体質から脱却するチャンスではあります。

 価格転嫁をしやすくするためにも、DX(デジタルトランスフォーメーション)や人員確保に向け継続的な対策を取って、より付加価値の高い建設サービスの提供をすることで社会の信頼に応えたい。

――25年は業界再編が目立つ一年でした。インフロニア・ホールディングス(HD)が三井住友建設を買収したり、スーパーゼネコンの大成建設が東洋建設の株式をファンドから買い取ったりしました。こうした大手によるM&Aが活発化していることに関してどう見ていますか。

 M&Aは個別の経営判断ではありますが、ただ単に事業量を大きくするとか、決して受注高を増やすためにやっているのではないと推測します。

――先行きに対する危機感から再編が目立っているということですか。

 危機感というよりも、単純に請負事業以外のやり方を模索しているのだと思います。ただ、M&Aを実施しても単純に1+1が2にはなりません。1+1が1.5とか1.8とか、その程度にしかならないのが実態です。ゼネコン業界で言えば、合併しても公共工事の受注機会は変わりません。私は、各企業がどうやって買収によるシナジーを出していくのかについて注視しています。

2025年は建設費用の高騰が表面化し、再開発事業が相次いで延期や白紙化するケースが目立った。業界はこうした課題にどう向き合っていくのか。次ページでは、宮本会長肝いりの業界の改革案を熱く語る。