生活保護以下なのに「就労自立」?
ワーキングプアを生み出している就労支援

 社会福祉学の研究者である桜井啓太氏(名古屋市立大学講師)は、研究者に転身するまでは生活保護ケースワーカーだった。毎日の業務を通して、生活保護と「自立」の関係に深い問題意識を抱くようになった桜井氏は、「私たちの働きかけは、誰を、どのような目的で、どのような場所へ移動させているのか」を明らかにしようと考え、大阪府内のP市における2006年~2008年のデータをもとに、就労による生活保護脱却の実態を検討した。なおP市は、桜井氏が勤務していた自治体ではない。

 この種の研究を紹介すると、しばしば「データが古すぎる」という批判を受ける。しかし、「誰が生活保護で暮らしているのか」を含め、数多くのプライバシーの制約の中で調査を行うこと自体が困難なのだ。その制約は、生活保護で暮らす人々を傷つけないために必要なものでもある。このため、重要な調査でありながら「同様の調査の最新データは2005年」といったことが、しばしばある。今回も、10年以上前のデータであることについてはご理解をいただきたい。

 生活保護を脱却した時点で、生活保護よりどの程度「マシ」だったのかを整理したのが、下のグラフだ。横軸は、その世帯の一家の所得(等価所得)と生活保護基準の比である。グラフにガタつきが見られるのは、サンプル数が「約100」と少ないことによっている。

生活保護とワープアを行き来する「無間地獄」を就労支援が生む皮肉