「情報開示が不明瞭なこともあり、AIJ投資顧問を担当先の基金に対して薦めるコンサルタントはいなかった」と、ある元年金コンサルタントは言う。

 2月28日に厚生労働省は、昨年3月末時点で同社に資金運用を委託していた年金基金の実態を公表した。84の基金のうち、複数企業が合同で設立する総合型厚生年金基金が74を占めた。総合型の多くは小規模でコンサルタントも雇えず、金融商品の知識も不十分なケースが少なくなく、それが高利回りをうたうAIJに資金を委託してしまう要因となった。

 AIJが集めた資金(昨年3月末で1852億円)の大半が消失してしまっているとみられる。運用を委託された資金のほとんどが損失となるだろう。

多くの総合型厚生年金基金は、AIJ投資顧問に資金運用を委託していないことをアピールするのに必死だ
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 厚生年金基金は、厚生年金の一部の運用と給付を代行し、そこに独自の掛け金を加えて運用することで、通常の厚生年金に上乗せした給付をすることを目的に設立されている。

 運用がうまくいかなければ、上乗せ給付どころか、現在そして将来の代行給付に必要な資産(最低責任準備金)さえ現時点で確保できない状況に陥る。実は日本株の長期低迷のために、そうした基金は少なくない。

 直近で最低責任準備金の8割未満しか資産を確保できていないか、3年度連続で9割未満の資産しか確保できていない基金は、指定基金に指定される。

 今回AIJに運用を委託していた基金のうち指定基金が12ある。指定基金ではないが委託分が保有資産の3割以上を占める基金も4つある。今回の損失でこうした基金の保有資産が最低責任準備金を大きく下回る公算は小さくない。

 上乗せ給付も含め、給付に必要な資産の積み立て不足分は、基金を構成する企業が埋めるしかない。問題は、総合型基金の構成企業の多くは中小企業であり、多額の負担に耐えられないケースが多いと想定されることだ。基金独自の上乗せ部分の不足は、加入者の同意を得て給付を引き下げることで解消するという方法がある。しかし、国の厚生年金の代行部分は、給付を引き下げることはできない。

 基金解散には、代行部分の積み立て不足の解消が前提である。今回、大きな損失を抱えることになる基金の構成企業は、穴埋めの負担を抱え続けることになるだろう。

 積み立て不足解消の負担のために倒産するケースも出るかもしれない。倒産した場合は、それ以外の構成企業が負担することになる。これが繰り返されると、構成企業がすべて倒産という事態もあり得る。加入者は、上乗せ給付だけでなく勤め先も失ってしまう。

 構成企業がすべて倒産した場合には代行部分については、国が引き取る。つまり、厚生年金がその損失をかぶる。金額は小さいとはいえ、ただでさえ苦しい公的年金財政の足を引っ張ることになる。

(「週刊ダイヤモンド」副編集長 竹田孝洋)

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