近年、“語彙力”関係の本が続々と出版され、急速にブームになっている。「美しい日本語の書き方」のようなマナー本だけでなく、ビジネス書のコーナーでもベストセラーが多数出ている。ビジネスパーソンが、いまメール術や語彙力を学ぶ理由とは?(文/友清 哲)

メールの文面は個性の宝庫である

 以前、ライター仲間と「様」の処遇について議論したことがある。仕事相手にメールを打つ際、冒頭の宛名を「○○様」と書くか、それとも「○○さま」と書くか、というのがお題だった。

 実に些細なことではあるが、意外と「様」派と「さま」派に二分され、前者が「ビジネスレターだから漢字を使うべき」と主張すれば、後者は「漢字だとどうも堅苦しく見えてしまう」と意見を述べた。正解がある議論ではないが、メールひとつ打つのにも、それぞれ演出に一家言あるのだなあと、妙に感心したのを覚えている。

 実際、メールというのは存外に個性の宝庫である。

 パソコンやスマホの画面に表示されるテキストは、自ら設定をいじらないかぎり、画一的な書体の羅列にすぎない。そこには手書きの文字のようなサイズのばらつきやクセ、あるいは字間や行間の取り方による個性は存在しないはずだ。

 ところが面白いもので、ちょっとした言葉のセレクトや改行のタイミング、漢字の使用頻度など、文面の印象を左右する要素は思いのほか多い。むしろ、書体や行間のコントロールが利きにくい分、個性の比較の場として、非常にフェアな土俵なのではないかとすら感じる。

 はっきり言ってしまえば、仕事のできそうな人とそうでない人、頭の良さそうな人とそうでない人、気遣いができる人そうでない人の差を、メールは浮き彫りにしてしまうのだ。