最強メソッドは、短くても気の利いたメールを書く技術

 しかし、言葉が与える印象値を重視しすぎるあまり、1通のメールを打つ時間が肥大しては無意味だ。どれほど美辞麗句を並べたところで、それを書くのに30分かかる人が有能であるとは思えない。

 また、メールとはいえ、コミュニケーションは相手の時間に侵食する行為でもある。丁寧で正確な言葉遣いであっても、冗長なメールは嫌われるだろう。限られた時間で一定以上の生産性を維持するためには、書く側にとっても読む側にとってもメールは簡潔であるに越したことはない。

 そこで、短くても気の利いたメールを書くノウハウこそが、現代のビジネスシーンで非常に有用であるというロジックが成り立つ。

 『気のきいた短いメールが書ける本』(中川路亜紀/ダイヤモンド社)は、タイトルの通り短くても失礼のないメールの書き方を指南する1冊だ。

 仕事の依頼をする時。相談を持ちかける時。誘いを断る時。ビジネスシーンには様々な目的を伴うメールが飛び交っているが、本書がここで示しているのは、決して無愛想になることなく、それでいて相手の印象を損なわないメールの作法だ。

 たとえば、「請求書をお送りさせていただきます」とするのは、いかにも違和感がある。送るべき必然性があるものに対し、「させていただく」とするのは不適切で、それなら「請求書をお送り致します」が正解だと著者は説いている。実際、この表現であれば、文章として正しい上に5文字も“節約”され、いかにも効率がいい。

 あるいは、相手が求めるスケジュールに無理がある場合、「この納期では無理です」とすっぱり断っては角が立つ。相手の虫の居所によっては、その後の付き合いに支障をきたすことだってあるかもしれない。
 それなら、「この納期ではお約束できません」とギリギリの勘案を滲ませ、さらに「○日であれば確実です」とフォローすれば、相手としても次の手が打ちやすいだろう。

 こうしたノウハウに触れるにつけ、日本語とはかくも選択肢に満ちた言語なのかと、あらためて思い知らされる。そのため、ルールとテクニックを知る者だけが得をする側面が強いのだ。

なぜ今ビジネスパーソンは、こぞってメール術を学ぶのか