日本のエレクトロニクスが総崩れの様相を呈している。半導体で初めて韓国に大敗を喫した1996年以来、日本勢は企業ごとに選択と集中を効かせてきた。そのうえでDRAMはエルピーダ、フラッシュメモリーは東芝、液晶テレビはシャープ、プラズマテレビはパナソニック、リチウムイオン2次電池は三洋電機、携帯端末はNECという具合に、連合艦隊を組んでサムスン1社に再戦を挑んだが、まるでミッドウェイ海戦の悪夢を繰り返すような結果に終わってしまった。無傷に近いのは東芝くらいなものである。ここで冷静に戦況を分析しておかないと、この先もサイパン、レイテ、ルソンの再来を招くことになりかねない。そう考えて、私見を述べておくことにした。建設的な議論の糸口にしていただければ幸いである。

赤字の真因

みしな かずひろ/1959年生まれ。82年一橋大学商学部卒、84年同大学大学院商学研究科修士課程修了、89年ハーバード大学文理大学院博士課程修了、ハーバード大学ビジネススクール助教授、北陸先端科学技術大学院大学助教授などを経て、04年から神戸大学大学院経営学研究科教授、『戦略暴走』、『戦略不全の因果』、『戦略不全の論理』など著書多数。
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 エレクトロニクスは、私の見立てでは事業立地の劣化が著しい。その点を、マイケル・ポーターの5つの力で見てみよう(次ページ図1参照)。

 まず、川下には巨大量販店が出現して、メーカーから利益を吸い取る図式が定着した。アメリカではウォルマートやベストバイ、日本ではヤマダ電機やヨドバシカメラが巨大量販の代表格である。彼らは青息吐息のメーカーを尻目に、5%前後の売上高営業利益率を確保する。

 技術の粋を尽くしてモノをつくるメーカーが、モノを右から左へ動かすだけのリーテイラーに利益率で負けてしまうのは、どう考えても異常に映るが、巨大量販1社の売場から追い出されると、年間売上高の何割かが吹っ飛んでしまうとなれば、確かにメーカーは巨大量販の要求を丸呑みせざるを得ない。その結果、店舗に客を呼び込むという名目で、週次の値下げや、話題を提供するための新製品開発が横行し、メーカーは疲弊しきってしまう。日本メーカーが頼みとする中国や東南アジアですら、同じ図式が出現するのは時間の問題である。