ただ、そんなうれしさとは裏腹に、
「志麻さんと本当に会えるのか?」

 大津波のような猛烈な不安も襲ってきた。

 しかし……、奇跡的に返信が来た。
 あんなに長いメールだったのに……。
 来週すぐに会えるという。
 近年稀に見るうれしいメールだった。

なぜ、初対面の後に
増上寺へ?

 志麻さんと初めてお会いしたのは、テレビ放映の翌週午後2時。とってもいい天気だった。
 挨拶後、私はこう切り出した。

「3時間で15品作っている姿を見て、びっくりしました。
 しかし、私、自分で体感できないと納得できないんです。
 もし可能でしたら、志麻さんの料理を実際に食べさせていただけないでしょうか」

 すると、志麻さんは即答した。

「ああ、いいですよ」

 うれしかった。
 初対面の志麻さんは、テレビの志麻さんと同じだった。
 とっても自然な飾らない感じで、いいなあ、と思った。

 初対面後、なぜか、私の足はこの場所へ引き寄せられた。

 徳川将軍家を祀る大本山・増上寺である。

 思えば、ここに来たことがなかった。

 なぜ、ここに引き寄せられたのだろう?

 そう思いながら境内を歩くと、お坊さんたちのお経が聞こえてきた。
 まるで交響曲のようで、すごく神妙な面持ちになった。

 これはいい機会だと思い、座ってお経を聞きながら、志麻さん初書籍のタイトルと装丁イメージを普段使っているダイアリーに懸命にスケッチした。

 最終的にタイトルはその通りにならなかったが、志麻さんとの出会いの感動を胸に、徳川家代々のみなさんの前で表1のデザインをきっちりスケッチできたことは本当に大きい。
 あの本には、徳川家代々の魂がそのまま乗り移っているのではないかと今でも思っている。

 今でもあの日、あの時、あの場所で、なぜあのお経に遭遇したのか、まったくわからない。

 彩りあざやかで、冷蔵庫の少ない食材でできる志麻さん「プレミアムレシピ」の数々は、連載第1回を、ぜひご覧いただければと思います。