「代えのきく存在」でも社会貢献はできる

 現在の就職難の時代、どの会社でもいいと考える学生が増えてきました。

 しかし、あるときまでは自分の好きな仕事、自分にしかできない仕事、生きがいを感じられる仕事を求める傾向が強く残っていました。

 かけがえのない存在になろうとこだわるあまりチャンスを逃し、入社3日目にして「私の居るところじゃない!」と辞めてしまう若者があとを絶ちませんでした。

 関西のある葬儀会社の社長さんと対談したときに聞いた言葉が印象的でした。

「私の会社に入ってくる学生は、誰ひとり第1希望ではありません。ほかに希望していた会社に落ちた学生がさしたる関心も持たずに入ってきます。最初はみんなしょんぼりしているのですが、仕事をやり始めると人に感謝され、礼儀も身につき、社会生活を送るうえで非常に役立つということを感じるようになると、この会社に入って良かったと言う若い者が多いのですよ」

 社長さんの言う通り、その世界に身を置いてこそ良かったと思えることは、人生において多々あるのです。

 地位が人をつくるという言葉もあります。

 ある組織のトップが辞める事態になったとき「あの人がいなくなったらこの組織は終わりじゃないか」と考えてしまう人は多いと思います。

 しかし、実際にはトップの陰に隠れていたナンバー2が頭角を現し、改めてナンバー2だった人の能力の高さに気づかされる経験をしたことはないでしょうか。ナンバー2だった人は、トップがあまりにも強かったせいで、活躍する機会を得られなかっただけなのです。組織というものは、多くの人が想像する以上に図太いものです。

 以前のコラムで突出した個人がひとりで組織を支えるよりも、システム化された組織を作ったほうが社会としては健全なのではないかと書きました。

 かけがえのない存在を目指すのも悪いことではありません。ただ、代えのきく存在として人生を生きることも、十分社会に貢献していることになるのです。