引きこもりは本当に“怠け者”!?
精神障害を抱える彼らの現実

 また、前回も紹介した新ガイドライン案についての考え方が報告された。

 主任研究者の齊藤氏は、これまでのように、引きこもりを漠然とした社会現象として見るのではなく、「現に精神保健・医療・福祉・教育などの専門機関の支援を必要としている」などと、当事者を明確な支援対象として規定。現場の各機関の担当者が、直面している引きこもり事例に役立つようなガイドラインを目指したという。

 引きこもりの定義は、前回触れたとおりだが、齊藤氏は改めて「統合失調症を最も見逃してはならない精神障害の1領域と考えると、評価にあたっては、引きこもりという枠で捉えている余裕のない精神病性の障害が、診断される前の状態で、引きこもりの中に多数含まれている事実を絶対に胸に置くことを明記した」と強調した。

 また、ガイドランの中では「引きこもりとは、メンタルヘルスの問題であるといっていい」と指摘。「個々の精神障害の特性を把握することを評価の中心に捉えるべきである」と提言したのも特徴的だ。

 つまり、引きこもりは「DSM-IVやICD-10の中に記された障害のいずれかに含まれることを把握すべきである」と、強調した。03年の「ひきこもり対応ガイドライン」に比べると、一歩踏み込んだ指針となっている。

 さらに、山梨県立精神保健福祉センターの近藤直司氏は、全国5カ所の精神保健福祉センターに訪れた、引きこもり当事者152人の診断結果をグラフで表した。その報告によると、最も多かった要因は「発達障害」の27%で、4人に1人を占めた。以下、「不安障害」が5分の1強の22%、偏りを持った「パーソナリティー障害」が18%、うつなどの「気分障害」が14%、統合失調症を中心とする「精神病勢障害」が8%、「適応障害」が6%と続き、識別できない「その他」は5%に過ぎない。

 引きこもりというと、これまではよく「怠け者」とか「甘え」、「親の甘やかし」などと言われてきた。しかし、本人のやる気や自らの努力だけでは、どうにも身体を動かすことのできない実態が、公的な国の研究報告でも浮かび上がってきたのだ。

“怠け者”“甘え”は偏見?
精神障害を抱える彼らの現実

 また、引きこもり当事者への介入を巡る象徴的な議論があった。ディスカッションで、相談者である地域の保健師などが自宅を訪問する際、1人で訪ねるのはリスクが高く、一方的な方向に巻き込まれてしまう可能性もあるので、「原則、複数以上のチームで行くべきではないか」との提起があったのだ。