前回に続き、「スマートグリッド」に関する渡辺慶一氏(NEDO・新エネルギー技術開発部主査)の講演の内容を紹介しながら、考察を加えたい。

 スマートグリッドは、字義を見ると「賢い送電網」となるが、筆者はこのコンセプトが、技術・制度・金融を抱合した、一つの産業のまとまりや、ライフスタイルを指し示す言葉として、用いられるようになると考えている。

 例えば、ITという言葉は、字義は「情報技術」であるが、いま、IT産業と言えば、コンテンツや様々なアプリケーションも含むビジネスが想起されるであろう。

 スマートグリッドは、再生可能エネルギー、省エネルギー、効率的な発電・蓄電にとどまらず、電気自動車などのアプリケーションをも含み、グリーンビジネス&クリーンテクノロジーで話題にのぼる、一見バラバラのビジネスや技術を、インテグレート(統合)し、結びつける技術であり、制度・政策の領域を示すコンセプトでもある、と筆者は捉えている。

 NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)が参加するニューメキシコ州の「グリーングリッドコンセプト」でも、実証実験の項目として、「発電、太陽光、太陽熱、太陽光・熱ハイブリッド、地熱、風力、バイオマス、蓄電、電気、物理、熱、化学、地熱、次世代交換器、マイクログリッド制御システム、配電設備保護、通信システム、スマート家電、シミュレーション・モデリング、規制・政策、グリーンものづくり」が対象となっている。スマートグリッドは、電気やエネルギーだけではなく、ITやコンテンツ、家電、車、交通、住宅などを含む包括的なコンセプトなのである。