東日本大震災から1年が経過した。その被害状況を見ると、死者・行方不明者は震災関連死を含めて2万人を超えた。全半壊した建物が38.3万戸、今なお避難している市民が34.4万人、住宅や工場、インフラの被害が16.9兆円。これに、数字では表せない原発事故の被害が加算される。こうした数字を眺めてみると、わが国を襲った東日本大震災の被害の大きさに、改めて慄然とせざるを得ない。亡くなられた方のご冥福を心からお祈りすると共に、避難生活が一刻も早く終結することを願ってやまないものがある。

経済は回復基調に

 東日本大震災により、東北地方のサプライチェーンが分断されたわが国の製造業は、大きな打撃を受けた。昨年3月の鉱工業生産指数が対前月比15.5%減の82.7%まで急落したことが、そのことを何よりも雄弁に物語っている。鉱工業生産指数は、4月が84.0%、5月が89.2%と、80%台で推移したものの、6月には90%台に乗せて驚異的な回復を示し、今年1月には95.3%まで上昇した。震災前の水準まで後1歩というところである。

 次に4半期毎の実質GDPの推移を見ると、昨年の1~3月期が△1.8%、4~6月期が△0.3%であったものの、7~9月期には前2期の反動もあって1.7%と急回復し、10~12月期は△0.2%であった。この結果、2011年(暦年)のGDPは△0.7%成長でとどまったが、これは緊急対策として政府・日銀が50兆円を超える財政政策・金融政策を発動して景気を下支えした効果が大きいと思われる。

 政府は4次にわたって補正予算を計上した。1次(昨年5月)4兆円、2次(昨年7月)2兆円、3次(昨年11月)12.2兆円、そして、今年2月の4次が2.5兆円と、総計で20.6兆円、これは失われた住宅・工場・インフラ被害額16.9兆円を超える巨額である。

 また日銀も政府と足並みを揃えるように4次にわたって国債購入等の基金の枠を30兆円拡大した。1次(昨年3月)5兆円、2次(昨年8月)10兆円、3次(昨年10月)5兆円、そして、今年2月の4次が10兆円である。もちろん、これらの財政・金融政策はユーロ危機等に対処した側面もあって、全てが東日本大震災対策に当てられた訳ではないが、それでもわが国経済の底割れを防ぐという大きな役割を果たしたことは間違いのないところである。財政・金融政策の効果が本格的に現れる2012年度は2%近い実質GDPの成長が期待されている。