トヨタは日本で最もお金を稼ぐ企業だ。春闘でトヨタが示す回答は、ほかの大手企業、さらにはグループ企業などの“目安”になってきた。各社の労組はトヨタに近い水準の回答を経営側から引き出そうと、トヨタの交渉状況をにらみながら、追い込みをかける。

 そんな春闘のリーダー役の企業が、今年はぎりぎりまで回答を出さず、デンソーなどのグループ企業が先に賃上げ額を示す異例の展開になっていた。

 あげくの果てに、賃上げ額は「非開示」にするという、リーダー役を放棄したかのような姿勢に驚きが広がった

 なぜ、トヨタは賃上げ額を明かさないのか。

 表向きの理由は、「グループ企業との格差の是正」をあげている。

 トヨタのグループ企業の春闘回答は、トヨタ本体との業績の差に配慮し、トヨタを下回る水準の賃上げ額を提示するのが常だった。しかしこの差が積み重なれば、グループ内の賃金格差は広がる一方になる。

 そこで、今春闘ではトヨタが賃上げ額を伏せて、グループ各社がそれぞれの経営状況に応じて自由に賃上げをするように促すことにしたという。業績のよい企業ならトヨタ本体より高水準の賃上げも可能なはずで、格差を縮められるというわけだ。

手当など含め「3.3%」と説明
政府の「3%賃上げ」要請に配慮

 しかし、この説明を額面通りに受け止る向きは少ない。

 トヨタの経営陣は、賃上げ額は明かさなかったものの、「定期昇給や手当も含めた賃上げ率は3.3%」とも説明しているからだ。

 背景には、政府が今春闘で「3%以上の賃上げ」を経済界に強く求めていたことがある。

 安倍政権が経済界に賃上げを呼びかける「官製春闘」は5年目を迎えた。だが個人消費に勢いはなく、「アベノミクス」の限界が言われる中で、今年は例年より高い賃上げが要請されていた。

 トヨタは政府の要請をクリアしたことを、さりげなく訴えたのだ。

 ただ、そこには「カラクリ」があった。