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孫泰蔵が語るスタンフォードから学んだ日本の実力シリコンバレーにあるスタンフォード大学。既存の発想を打ち破る学問や理論が多く研究されてきた

『ジャパン・アズ・ナンバーワン』。社会学者のエズラ・ヴォーゲルさんが1979年に出したこの本は、日本国内で70万部を超えるベストセラーとなり、日本の高度成長を象徴する言葉となりました。

 80年代になると、全米に「ジャパンバッシング」(日本たたき)の波が押し寄せ、日本製品を破壊する動きに発展しました。しかしながら、その勢いはバブル崩壊で失われ、日本は今なお「失われた20年」を抜け出していません。

 こうした状況を打開するためには、イノベーションをいかに起こすかで、異論はないでしょう。実際、日本では米グーグルや米フェイスブックを生んだシリコンバレーの仕組みに再び注目が集まっており、日本企業によるシリコンバレー企業の視察が後を絶ちません。

 ベンチャーキャピタルにアクセラレーター、アーリーステージにデモデー……。スタートアップを成長させる仕組みを学ぶことは大いに良いことですが、正直なところ僕は不安を感じています。

 僕自身、シリコンバレーにはかれこれ20年は行き来しており、普通では会えないような人々とのつながりがあります。そこで話をしていると、シリコンバレーのモデルすら、もはや「遅れているのではないか」と感じてしまいます。

 つまり、日本企業が今、シリコンバレーをまねして良いのだろうか。その気持ちが日増しに強くなっているのです。