たしかに終身保険は貯蓄・運用機能を持っているわけですから、当然、バランスシート上の資産になります。ただし、支払った保険料すべてが資産になっているわけではありません。
たとえば、100万円を銀行に預ければ、その資産価値はそのまま100万円ですが、合計100万円の保険料を保険会社に払ったとしても、バランスシートに乗ってくるのはその一部だけです。100万円の一部は純粋な保険機能(保障)のために使われ、その残りが解約返戻金として貯蓄・運用されているからです。

では、このような貯蓄型保険に加入している方は、月々払っている保険料のうち、いくらが貯蓄・運用に回されているかをご存知でしょうか? おそらく知らないと思います。これが大きな問題なのです。

ちょっとたとえ話をしましょう。
耳の調子がおかしいので耳鼻咽喉科の先生のところに行ったとします。雑談ついでに「じつは最近、腰も痛くて……」と話したら、先生が「じゃあ、ついでに腰も診てあげましょう」と言います。その後、耳と腰との診察料をまとめて払いました。何度か通ううちに、いつのまにか耳よりも腰の治療がメインになってきたようです。診察料はいつもまとめて払いますが、それぞれの内訳はわかりません。果たしてこれでいいのでしょうか?

ここには2つ問題があります。まずは、専門家でもない耳鼻咽喉科の医師に腰の診察をお願いするのが「そもそも医学的にいいのか」どうかという点。
もう1つは、「診察料の内訳がわからない」ので、このまま同じ医者に両方を診てもらうほうがトクなのか、整形外科と耳鼻咽喉科それぞれに通ったほうがいいのかが判断できないということです。

保障機能と貯蓄・運用機能を組み合わせた終身保険は、この状況によく似ています。保障のためのツールである保険に、貯蓄・運用の役割を担わせている意味でもそうですし、払っている保険料がどういう比率で使われているかわからないという点も同じです。

セット販売は、顧客の判断を鈍らせる典型的な方法です。
価格のわからない複数の商品をまとめて販売する「福袋」と同じやり方ですね。こうやって商品をセットにしてしまうことで、単品ではなかなか売れない商品を買わせたり、より多くの利益を得たりすることが可能になります。