地方に必要なのは「かっこいい大人」

 このような大きな戦略の下、着実に成果を重ねる宮崎県日南市だが、その戦略・戦術も田鹿氏というキーパーソンがいなくては成立していなかった可能性が高い。本連載では、そんなキーパーソンが地域で活躍するために必要なことについても触れていきたい。

 宮崎大学を卒業後、29歳という若さで日南市の「マーケティング専門官」として民間人登用を受けた田鹿氏。当時の市長と、企業勤め時代の同僚だったことから声をかけられたのが着任のきっかけだったという。

 だが、地域における民間人登用には「形だけ」「行政内部での足の引っ張り合い」といった課題が付きまといがちだ。そんな道にあえて飛び込んだ田鹿氏の背中を押したのは、大学時代の原体験だった。

「大学のときに宮崎の商店街活性化のボランティアをしていたんですが、中心になっていた大人の人たちがかっこよく映ったんですよね。そんな人たちと同じ社会人として対等に話せるようになりたいなと。本業をやりながらも町のことを熱く語るとか。利他の精神というか、社会的意義に真摯に向き合っている人たち、という印象で」(田鹿氏)

 現在の日南市では、大学生だった頃の田鹿氏が周りの大人たちから影響を受けたように、田鹿氏らの仕事に関わることで、地元に残って「街の活性化につながる仕事」に取り組む進路を選ぶ大学生や高校生が現れているという。

 イベントや動画と言った空虚な施策ではなく、実体験の伴った「仕事」として地方創生を感じられること。そしてそこに生身の「人」がいること。それが、日南市でキーパーソンの活躍、育成が可能になっている要因のひとつなのだろう。

 次回以降の連載でも、各地域の「人フォーカス」戦略・戦術および、その地域のキーパーソンの姿に迫っていく。

(70Seeds編集長 岡山史興)