ミトコンドリアの「効率」を最大限に上げる

 古代のバクテリア。神々しい女性のエネルギー。ミトコンドリアはとても神秘的で呪術的に思えるのではないか? もう少しこの小さな発電所の理解を進めよう。

 ミトコンドリアは細胞の一部で、葉巻形をしており、二重の膜に巻かれ、内膜は外膜の内側で折れ曲がっている。

 平均的なヒトの細胞は数百~数千のミトコンドリアをもつ。細胞がとても多くのエネルギーを要する部分──脳、網膜、心臓──では各細胞に約1万個のミトコンドリアを有している。つまり、人間の体には1000兆を超える数のミトコンドリアがある。腸内に生息しているバクテリアの数より多い!

 そして事実、僕らの呼吸器系・循環器系全体──肺、心臓、血管──は、ミトコンドリアが僕らを生かしつづけるエネルギー、ATPを生成できるよう酸素を届けるために存在している。

 ミトコンドリアはあなたの体が周りの世界にどのように反応するかを決める。ミトコンドリアの働きが有効になったら、精神的パフォーマンスは向上する。ミトコンドリアが効率的にエネルギーを作れば作るほど、心身のパフォーマンスが高まり、もっと多くのことができ、それをしているあいだの気分が良くなるのだ。

あなたの命のエネルギー「ATP」とは何か?

 ミトコンドリアが担う最も重要なこととは、あなたが食べたものからエネルギーを引き出し、酸素と組み合わせて、ATPを生成することだ。ATPが発見されたのは、ほんの100年ほど前でしかなく、もっと多くを学ばなければならない。しかし僕らはATPが心身にパワーを与えるエネルギーを蓄えていることは知っている。

 人間のほぼ全細胞が、機能するためにATPを必要としている。これなしには、細胞は──だからあなたも──生き残ることができない。ミトコンドリア内で起こるエネルギー生成は、体の最大の機能だ。ATPはあなたの命の生命線と言える。

 こんなふうに考えよう。人間は食料なしでも3週間は生きていられる。水なしでも3日ほどは生きられる。だがATPなしには、あっというまに死んでしまう。

 ATPに蓄えられたエネルギーは、ATPが体に燃料として使われたときに放出される。体がATPを燃料として使うとき、それは分解され、2つの副産物ができる。アデノシン二リン酸(ADP)とリン酸(P)である。

 思い出してほしい。ATPとはアデノシン三リン酸、つまりリン酸3つの結合を含んでいる。このうち2つの結合が解かれ、アデノシン二リン酸と1つきりのリン酸とに分解されたときに、エネルギーが放出される。

 このエネルギーこそが、あなたのパワーだ。こうして体に組み込まれた小さな1000兆超のバクテリアが実際、あなたをコントロールしている。