シリコンバレーでIT企業家として長年活躍してきた著者が、ITの専門家としての技能を生かして、自らの体を「ハック」し尽くし、さらには23年の歴史を持つパロアルトのNPO、シリコンバレー保健研究所の所長(後には会長)として、さまざまな医学分野のエキスパートに取材し、現在の科学の最先端の脳の機能UP法を1冊にまとめた。タイトルは『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術』。アメリカでは初版から10万部で刊行され、大反響を呼んでいる。本稿では、同書から特別にそのハイライトを紹介したい。

バクテリアが「秒単位」で行動を仕切っている

 15億年前、地球は温かな海におおわれ、空気は猛毒──酸素──に満ちていて、これにさらされる生物はほとんど死んでいた。

 しかし、いくつかのたくましい種のバクテリアが、酸素を使ってエネルギーを作る方法を身につけることで、厳しい環境に適応していった。このバクテリアは酸素をとりこんで、今日ではアデノシン三リン酸(ATP)と呼ばれる物質を生成できたのだ。

 やがてこの種の一つ──小さな紫色のバクテリアだったと思われる──は、もう一つのタイプの細胞に組み込まれた。これら組み合わされた細胞は次の10億年のあいだに進化し、動物を、そして人間を形成した。

 この古いバクテリアは、いまだに僕らの内部にあって、細胞の成長に必要なエネルギー源であるATPを生成しつづけている。新しい研究によれば、このバクテリアは今日でも、科学者が期待した以上に広範囲に僕らの行動を司っている。実際、人間の感覚を秒単位で仕切っている。

 このバクテリアは今日では何と呼ばれるか?

 ミトコンドリアだ。

 毎週日曜日にお母さんとしゃべるネタがないという人がいるかもしれないから、ここに一つ提供しよう。あなたのミトコンドリアは全部お母さんからもらったものだ

 多くの人は、遺伝的性質を50%は母親から、もうあと50%は父親から均等に受け継いでいると考えているが、実際には私たちは遺伝的には母親のほうに似ている。

 どの子どもも宿されたとき、卵子も精子もミトコンドリアを含んでいるが、精子のミトコンドリアは卵子へ泳ぎ着くのに力を使って、卵子にもぐり込んだときに、しっぽを落としてしまい、そこへ残してきてしまうのだ。つまり、受精した卵子のミトコンドリアのDNA(デオキシリボ核酸)は母親だけから引き継いだものだ。

 ヨガの先生が「神々しい女性のエネルギー」について語るとき、実際はこの古いバクテリアを指していると気づいている人はいないだろう。