いよいよ春が来ます。
寒さの中に閉じ込められていた様々なものが、春の到来とともに表に出て来ます。
地中深く眠っていた種子は、最初は密やかに、そして、ある瞬間一斉に芽吹いて来ます。鮮やかな生命の自己主張です。
まさに春は、生命のチカラを実感する季節です。
生命は、秩序だっている訳ではありません。猥雑で情け容赦なく、とても我がままです。他の種のことを気遣っていては、命の維持も種の保存もどうなるか分かりません。生命はそれぞれの勝手な都合で精一杯生きています。人間さまの都合で生きている訳でもありません。それでも、春は人々に喜びをもたらします。
だから、太古の昔から、人間は、春の到来を祝してきました。時には、生々しいまでの祝祭もありました。
という訳で、今週の音盤は、ストラヴィンスキー「春の祭典」です。
「春の祭典」には、躍動感に溢れた生命の本質的な美しさが溢れています。
此処では、西欧的伝統の殻は破られています。古典的な音楽秩序を超えた、自由な音楽が力強く響いています。ルネッサンス、バロック、古典派、ロマン派と脈々と続いてきたクラシック音楽に、不協和音と変拍子の大々的な導入によって根本的な断裂を刻んだ20世紀音楽の嚆矢です。