「新年度うつ」の痛ましい実態写真はイメージです

小学生の時から双極性障害(躁うつ病)・パニック障害・過呼吸などに苦しみ、その後克服した『大丈夫。そのつらい日々も光になる。』の著者・中島輝氏。自身の経験を活かし、心の病を抱える人に対して、解決へと導く手助けの一翼を担いたいという思いから「心理カウンセラー」となり、これまで1万人以上のカウンセリングを行ってきた。特にこの時期、うつ病に関する相談が少なくない。そこで今回は、会社で“エリート候補”といわれていた29歳が産業医から「うつ病」と診断され、その後どう克服していったのかについて紹介したい。

ベッドから
起き上がれない!

 北田和也さん(29歳)と初めて会ったのは5月半ばのことだった。背の高い爽やかな青年で、いわゆるモテるタイプである。ただ、顔色は良くなく、髪型も少し乱れていた。

 私は和也さんをカウンセリング室に案内し、座るよう促す。彼はこの1週間の出来事をゆっくりと話し始めた。

 ゴールデンウイークが明けた木曜日、熱はなく、特段痛いところもないのに、彼はベッドから起き上がれなかったという。しかし、全身がだるい。そわそわして落ち着かない。疲れが体を支配していた。

 会社では春から携わっている大きなプロジェクトが進行中だったが、疲労感に襲われ、出勤できる状況ではない。何とか受話器を掴み、上司に休む旨を伝え、その日は体を休めていた。

 ところが、翌朝も起き上がれなかった。その翌日は土曜日で、週明けまでには治るだろうと思ったが、月曜日の朝も、やはり起き上がれず、会社を休んだ。

「大丈夫か?産業医に診てもらうといい。診断書もらうのを忘れるなよ」

 電話口で上司はそう言った。電話を切ると、涙がボロボロとこぼれた。