Photo:首相官邸HPより

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試射の中止、核実験場の廃棄を宣言した。金委員長は「もはやいかなる核実験や中長距離ミサイル、ICBMの試射も必要なくなった。北部(豊渓里[プンゲリ])核実験場もその使命を終えた」と述べた。このタイミングで、核実験停止、核実験場廃棄を公表した背景には、南北首脳会談や、その後の米朝首脳会談への思惑があると考えられる。

北朝鮮との融和が進むと
拉致問題は前進する可能性がある

 北朝鮮のミサイル開発を巡る外交戦が急展開する中、日本が「置き去り」にされる懸念が次第に広がっている(本連載第180回)。だが、日米首脳会談では、ドナルド・トランプ米大統領が「拉致問題について最善を尽くす」と安倍晋三首相に約束した。

 筆者は約10年前、ダイヤモンド・オンラインの連載の第1回で、『北朝鮮テロ指定解除で「拉致問題」はむしろ解決へと前進した』と論じた。一般的に、北朝鮮との融和ムードが高まり、それまで北朝鮮に科されていた様々な制裁が解除される状況になると、「北朝鮮による日本人拉致問題」の解決は遠のくと考えられてきた。しかし、実際は融和ムードになると、「拉致問題」は解決へと進展すると主張したのだ。

 具体的に考えてみよう。日本国内では、「拉致問題」の解決が最重要課題だ。「拉致問題」を解決するために、北朝鮮に圧力をかける「制裁」がある。だから、北朝鮮との融和ムードが高まり、制裁解除の方向になると、拉致問題解決について悲観的な見方が広がる。

 しかし、見方を変えて、国際社会から「拉致問題」を考えてみたい。国際社会、特に北東アジアから遠い欧米諸国にとって、日朝間の拉致問題への関心は低い。最重要の関心事は、欧米と近接した中東諸国など紛争地域への「核兵器の拡散」に関与する「ならずもの国家・北朝鮮」をどう抑え込むかということだ。

 国際社会でも、北朝鮮を抑え込むための手段は、基本的に「圧力」である。そして、圧力をかけるための様々な交渉カードがあり、その1つとして「拉致問題」も考えられている。だが、交渉カードの中で「拉致問題」の重要性は基本的に高くない。