グーグル、マッキンゼー、リクルート、楽天など12回の転職を重ね、「AI以後」「人生100年時代」の働き方を先駆けて実践する尾原和啓氏が、その圧倒的な経験の全てを込めた新刊、『どこでも誰とでも働ける』が発売されました。
起業家・けんすう(古川健介)氏、YouTuber・ヒカキン氏など、新時代の担い手からも絶賛されるほか、各種メディアで大きな話題を読んでいます

今回は同書より、尾原氏ならではの「どこでも誰とでも働ける」英語力の身につけ方を紹介します。

グーグル翻訳だけで、
エアビーで圧倒的な人気に!

「どこでも誰とでも働ける」ためには、英語力は必須と考える人が多いでしょう。でも、シンガポール・バリ島と東京を拠点に、世界中を飛び回っているぼくの実感は違います。英語といっても「生活のための英語」と「仕事のための英語」の2つがあって、「生活のための英語」はもういりません。

 たとえば、旅行に行ったときや日常生活の中で、「あれがほしい」「これをしたい」といったレベルの英語であれば、グーグル翻訳で十分です。

 ぼくはウクライナなど、そもそも英語が話せない人が多い国にもよく行きますが、そんなときはスマホでグーグル翻訳を使って、日本語や英語と現地語をリアルタイムで翻訳しながらコミュニケーションをとっています。上海に行ったときも、街中ではほとんど英語は通じませんでした。中国のエリート層は英語が話せるイメージがあるかもしれませんが、いまだに3つ星のホテルに泊まっても、少し英語で話しかけただけで、「この人には触っちゃいけない」という雰囲気になります。日本とあまり変わらないんですね(笑)。

 でも、グーグル翻訳のアプリを立ち上げ、マイクのアイコンをタップして会話モードにしておいて、日本語で話しかければ、英語だろうが中国語だろうが、自動で翻訳してくれます。訳したテキストを相手に見せてもいいし、音声で聞かせることもできる。短い会話なら、わずかな遅れでどんどん訳してくれるので、いちいち会話が途切れることもありません。

 レストランのメニューが読めないという心配も、グーグル翻訳が解決してくれます。カメラのアイコンをタップして画像入力モードにして、メニューの文字を読みこめば、英語(または現地の言葉)があったところに日本語で上書き表示されます。もちろん完璧な訳とまではいきませんが、料理の雰囲気はだいたいつかめるはずです。

 2017年にはグーグルが発表したワイヤレスイヤホン「ピクセルバズ(Pixel Buds)」によって、ドラえもんの「ほんやくコンニャク」が現実になったと話題になりました。相手が話した言葉を自動翻訳した日本語が自分のイヤホンから聞こえ、自分が話した日本語が相手の言語に自動翻訳されて相手のイ
ヤホンに届くようになっているので、あたかも同時通訳が実現したかのように見えるのです。

 つまり、ちょっとしたお願いをしたり、ひと言質問するといったレベルなら、スマホがあれば十分なのです。テクノロジーはもう追いついているのに、みんなが気づいていないだけ。だから、どんどん使いましょう、ということです。

 実際、日本のある地方都市で自宅をエアビーアンドビー(Airbnb)向けに開放して、外国人観光客から圧倒的に人気を集めているのは、英語も中国語も韓国語もしゃべれない、会話は全部グーグル翻訳というおばちゃんです。彼女の売りは、日本の普通の暮らしを体験できることと、一般的な家庭料理を食べられることです。レビューには、いろいろな国の言葉で「日本のお母さん、ありがとう」と書かれています。

仕事の英語は「市場」で学ぶ!

 ただし、生活のための英語はいらないと言っても、外国人と肩を並べて働くには、英語を話せたほうがいいのは言うまでもありません。そのレベルの英語を身につけたかったら、「市場」で学ぶのがいちばんです。

 市場の人からすれば、なんとかお客様に自分の商品、たとえば時計を買わせたい。一方、ぼくは、こんなあやしげなお店で買うつもりはないけれども、どんな時計なのかには興味がある。そういう場面では、店主は一生懸命時計の説明をしてくれます。

 相手の言葉がわからないから、「ごめん、それは何のことを言っているの?」と聞くと、「◯◯」という言葉は時計の「針」のことを指している、といったことがだんだんわかってきます。相手は時計を売りたいから、ぼくのつたない英語や中国語でも、がんばって、「お前の言っていることは、こういうことか?」と確認してくれます。

 市場ではどちらも損をしたくないから、一生懸命に話して聞くので、いちばん手っ取り早く、生きた英語を学ぶことができるわけです。

 さらに上級者を目指すなら、今度は自分が市場になることを考えましょう。先ほどのエアビーのおばちゃんのケースがまさにそれで、彼女は普段どおりの生活をしているだけです。にもかかわらず、相手がそれに興味をもって、いろいろ聞いてくれるわけです。その状態になれば、どんなにつたない英語でも、身振り手振りをまじえていろいろ説明しているうちに、「あなたが言っているみそ汁というのは、こういうスープのこと?」とか、「日本では水を煮立てて海藻だけで出汁をとるの?そんなの見たことない」といったことを、向こうが自分なりに咀嚼して、正しい英語に言い直してくれるわけです。

 つまり、「英語は市場で学べ」の最強バージョンは、自分が市場になることです。向こうが買いたいもの、知りたいことを相手の目の前でちらつかせることができれば、勝手に向こうがこちらのつたない英語を修正してくれるので、修正してくれた英語をそのまま覚えてしまえばいいわけです。

 実際にぼくはグーグル時代にそうやって英語を学びました。ぼくは、グーグルの中で唯一「iモードがどうやって日本で普及したか」「非接触ICカード技術方式のフェリカ(FeliCa)がどうやってビジネスとして定着したか」を、テクノロジー(技術)とストラテジー(戦略)とマーケティングの3つの側面を重ねて語れる人間だったので、向こうから「教えてくれよ、尾原」「絵文字のドットって、尾原が打ったって聞いたんだけど」と来てくれる。

 そうすると、ぼくがどんな下手な英語をしゃべっても、相手が全部直してくれます。そういう状態をどうやってつくるか、です。

 英語を身につけるというと、みんなは形から入るから、留学が必要だとか、オンライン英会話が便利とか言う人が多いのですが、そのやり方が絶対ではありません。

 むしろ、英語を身につけたいと思ったら、向こうが知りたがることをどうやって見つけるか。そこを意識してがんばっていれば、おのずと自分が市場になり、向こうが自分のことを見つけて話しかけてきてくれます。