「ノープロブレムね!」
アヤしいチャンポン英語で活躍するA氏

 本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。今回はダークサイドというよりは、ブライト(明るい)サイドの話だ。だがそれは、多くの日本人が無意識に持っているダークサイドを炙り出す。

超ヘタな英語でも海外で活躍できる人の仕事術高校生レベルの語彙力でも、堂々とビジネスマンとして渡り合って行ける外国は、実はたくさんある

 筆者の住んでいるマレーシアには多くの日本人が住んでおり、日本資本ではなく、現地あるいは別の国の資本の会社で働く日本人も多い。筆者は、ここ1年ほど、そういった日本的ビジネスの外で活躍している日本人を少しずつ取材している。

 先日は、現地の出版社で敏腕営業として働く日本人男性Aさん(60歳)の話を聞くことができたのだが、正直びっくりした。

 英語がヘタなのだ。例えば、出版物のデザイン担当で、中華系マレーシア人のチュウさんとの会話は以下のような感じだ。

Aさん「チューさんね、ディス、サンプルね、モア イエローカラーね。モア、イエローカラー」

Aさん「アンドね、チューさん。アド(アドバタイズメント)、スペースね、スリータイムズ(3倍)ね。ノット トゥタイムズ(2倍)、バットスリーね」

チュウさん「Mr.A, Sorry, I can't do it. It has already fixed, if it is three times, I need to start everything again. It takes time. (Aさん、すまないけどできないよ。もうそれで決めちゃったから。3倍のスペースにするなら、全部イチからやり直さなくちゃならないんだ。時間かかるんだよ)」

Aさん「ノー プロブレムね。ユーキャンドゥイットね。ユーアーエクセレント、ソー、ユーキャン」

 そういいながら笑顔でチュウさんの肩を叩いて、自分の机に戻り、鳴っていた電話を取ると取引先と話を始めてしまった。チュウさん、やれやれという様子でため息をつくと、Aさんに言われた通りにデザインの修正を始めた。

 そのAさんは、取引先との電話でも、こんな感じだ。

「あー、プライスね。プライス オブ アドね。ディペンディング オン サイズね」

「名前?あー、私の名前ね。マイネーム イズ A。エイ、オー……(スペリングを話す)」

「オーケーオーケー、アイ センド メールね。プライス ゼアね」