会見では、ハリルホジッチ前監督の怒りが収まらなかった
Photo:Natsuki Sakai/Aflo

ワールドカップ・ロシア大会の開幕まで2ヵ月あまりに迫った段階で、日本代表監督を電撃的に解任されたヴァイッド・ハリルホジッチ氏(65)が4月27日、東京・千代田区の日本記者クラブで記者会見に臨んだ。契約を解除された代表監督が反論を含めた思いの丈を訴えるのは、日本サッカー界でも初めてのケース。予定されていた1時間を大幅に超える、主観が散りばめられた独演会から伝わってきたのは、ハリルホジッチ氏を異例の行動に駆り立てた3つの理由と、西野朗新監督が率いる日本代表及び選手たちへ今もなお抱く深い愛情だった。(ノンフィクションライター 藤江直人)

予定を超えた90分間の記者会見は、
ハリル前監督のまさに“独演会”

 フラッシュの洪水を浴び、332人を数えたメディアの視線を集めながら、ヴァイッド・ハリルホジッチ氏は開始予定時刻の午後4時よりも5分早く記者会見場に入ってきた。

 フランス語の女性通訳2人に挟まれる形で就いたひな壇で、用意されていた書類に目を通すために黒縁の眼鏡をかける。そして、コップの水を口に含んで喉を湿らせてから、静かに第一声を切り出した。

「皆さん、こんにちは。まずは今日お越しいただき、ありがとうございます」

 東京・千代田区の日本記者クラブで27日に行われた、前日本代表監督による緊急記者会見。パリ市内のホテルで、現地時間4月7日夜に日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長から突然の解任を告げられた。そして、21日に来日した羽田空港では「真実を探しに来ました」と偽らざる思いを吐露し、嗚咽を漏らした通訳につられるように目を潤ませた。

 メディアを介して、胸中に募らせてきた思いの丈をファンやサポーターへ届けるために設けられた舞台。解任への経緯や就任以来の仕事を振り返る冒頭の説明は途中から独演会と化し、司会進行役の男性から2度に渡って「巻き」が入る中で、予定していた30分間を約20分も超えた。

 日本記者クラブ側もぎりぎりまで時間を延ばしたが、続けて入った質疑応答は4問で打ち切らざるを得なかった。自ら拍手を要求し、日本語で「心よりありがとうございました」と感謝しながら会場を去った時には、終了予定時刻の午後5時を30分以上も過ぎていた。

 時折声のトーンが上がることはあったものの、幾度となく見せてきた激情家の一面が顔をのぞかせることはなかった。それでも90分間を超えた、肩書きが前日本代表監督になってから初めて臨んだ記者会見から伝わってきたのは、65歳のハリルホジッチ氏を日本サッカー史上に残る異例の行動に駆り立てた3つの理由だった。