そして、その中心にはいつも李がいる。大きな身振り手振りと、けっして上手ではないが絶妙な日本語トークで、疲れ知らずの“接続役”に励むのだ。そんなシーンが夜ごと繰り広げられてきた。李は言う。

「私にとって店は、商売の場じゃない。サロン、交流の場なの。もちろん、来てもらった人には気持ちよく過ごしてもらいたいから、料理にもサービスにもこだわっているけど、お金じゃないの。店をつくって、お金はそんなに儲からなかったけど、人は儲かった。人という財産がたくさんできたの」

 店を始めるまでの李の拠点は、路上だった。喫茶店や飲み屋、街中に停めた自家用車の中が彼の応接間であり、仕事場だった。そこで取材をこなし、原稿を書きながら、通りで客を引く部下たちの様子に目を光らせ、何かトラブルがあればすぐさま飛び出していく。そんな李の躍動する姿を毎日見ることができた。

 しかし、念願の“サロン”を手に入れてからの李は、店の大きなテーブルの前に腰を据え、ノートパソコンを開いてひたすら仕事をし、客が来ると、自ら“ホスト”となってもてなす。ヤクザをマスコミ関係者に紹介し、右翼を左翼に引き合わせ、風俗嬢と学者の合コンをセットする。そこで李は縦横無尽に語り、そして振る舞う。

「“政治”の話もすれば、“性事(せいじ)”の話もするの。どっちもあって人間だから」

 そこは、あたかも「混沌」と「自由」と「放埓」が渦巻く、“梁山泊”の様相を呈するようになっていった。

欲望が李を成長させ
欲望が李を地獄に堕とす

 店をオープンさせてからの李の人生は、端から見れば、順風満帆のように見えただろう。しかし、それは“台風の目”のようなもので、成功という“目”の周囲には、絶えず暴風が吹き荒れていた。